福島第一原発で作業員が被曝したことを伝える NY タイムズの記事が目を引いた。
NYTimes.com: “Japan Raises Possibility of Breach in Reactor Vessel” by Hiroko Tabuchi, Keith Bradsher and David Jolly: 25 March 2011
防護服に身を固めた移送の様子の異様さは、事態が重大な局面に入ったことを窺わせるのに十分だった。
NY タイムズの早版にはその後削除された下りがある。
削除された場合は訂正文が添えられるのが通常だが、今回はそれすらない。
いくつかのサイト[ここ、ここ]が削除されたことに気づき、早版の全文をそのまま引用掲載していたサイトもあった。
削除されたのは「3号機の原子炉容器には縦に大きな亀裂がある」という部分で、次のような下りだ。
Infinite Unknown: “Japan Nuclear Crisis: This Is Like Admitting That MOX Reactor No. 3 Has Been Breached And Has Released Plutonium“: 25 March 2011
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容器損傷の懸念
3号炉に関しては以前にも懸念が浮上していた。日本の政府当局は9日前に原子炉容器(reactor vessel)が損傷したかもしれないと述べていた。
Concerns about Reactor No. 3 have surfaced before. Japanese officials said nine days ago that the reactor vessel may have been damaged.
原子力安全・保安院次長の Hidehiko Nishiyama は金曜日に原子炉容器の損傷に言及し、隣接したタービン建屋の水が高度の放射能を帯びていたのはそのためかもしれないと述べた。
Hidehiko Nishiyama, deputy director-general of the Japan Nuclear and Industrial Safety Agency, mentioned damage to the reactor vessel on Friday as a possible explanation of how water in the adjacent containment building had become so radioactive.
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容器そのものに長い亀裂がある
日本と広いコンタクトを持つ原子力関係の上級役員のひとりが匿名を条件に語ったところによれば、原子炉容器そのものに縦に長い亀裂があるという。亀裂は原子炉内部の水面レベルより下まで走っており、そこから液体やガスが漏れているという。
A senior nuclear executive who insisted on anonymity but has broad contacts in Japan said that there was a long vertical crack running down the side of the reactor vessel itself. The crack runs down below the water level in the reactor and has been leaking fluids and gases, he said.
負傷した複数の作業員の放射線によるやけど(radiation burns)の程度がひどいことから、破損した燃料棒に直接接触した水による汚染と関係があるのではないかとこの役員はいう。
The severity of the radiation burns to the injured workers are consistent with contamination by water that had been in contact with damaged fuel rods, the executive said.
「容器には明らかに、間違いなく亀裂がある。上から下まで、しかも大きい。亀裂の問題はそれが小さくならないことだ」と彼はいう。
“There is a definite, definite crack in the vessel — it’s up and down and it’s large,” he said. “The problem with cracks is they do not get smaller.”
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なんとも不気味な記述だ。
暴露系サイトならともかく、NY タイムズだけに一層不気味さが増す。
しかも、何らの訂正文なしに削除されたので、早版を読んだものでなければ削除にすら気づかない。(記事そのもののタイトルも早版の “Japan Raises Possibility of Breach in Reactor Vessel” から、確定版では “Japan Encourages a Wider Evacuation From Reactor Area” に変更されている。)
スリーマイル島事故の場合は原子炉容器には何ら損傷がなかったので、大量の放射性物質が拡散されることはなかった。
日経 BP:ECO JAPAN: “原発事故 スリーマイル島とチェルノブイリの取材経験から見えてくること” by 石弘之: 18 March 2011
チェルノブイリ事故の場合は格納容器そのものがなかったことから大量の拡散が行なわれたということらしい。
もし、格納容器に亀裂が入っているのが事実なら、容器そのものの破損もあり得るということか・・・
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NY タイムズは「福島第一原発原子炉の現況」を連日更新しており、1号炉から6号炉について、写真を添えて時系列的にその変化をまとめている。
3号炉に関する記述は次のようなものだ。
NYTimes.com: “Status of the Nuclear Reactors at the Fukushima Daiichi Power Plant – Interactive Graphic“: 16 March 2011
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危険な3号炉
3号炉はウラニウムとプルトニウムを使用しているのでより毒性の高い放射能が生じる危険性がある。3号炉の原子炉格納容器は破損し、また使用済み燃料プールが暴露した状態になっている可能性がある。原子炉には 548 本の核燃料集合体(FA)と、514 本の使用済み燃料棒が入っている。
The reactor used uranium and plutonium, which may produce more toxic radioactivity. The reactor containment vessel may have been damaged and the spent fuel pool may have become uncovered. Reactor has 548 fuel assemblies, the spent fuel pool has 514.
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黒煙を出した3号炉がプルトニウムを含む混合酸化物 MOX 燃料を使用する、いわゆるプルサーマル原子炉[pluthermal:plutonium thermal use、和製英語]であることは海外では既定の事実として報道されている。
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作業員の被曝が問題になった日、総理が国民向けの記者会見を行なったが「予断を許す状況には立ち至ってはいない」というにとどまり、記者団からもおざなりの質問が出ただけで、国民が知りたい情報はなんら聞けなかった。
同じ日、官房長官は原発30キロ圏からの自主避難を促した。
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実際にどうなっているのかが分からないだけに、疑念と恐怖は大きくなる。
原子炉格納容器に亀裂が走っているといわれれば尚更だ。
一口に放射能といっても、放射性物質によって影響が異なる。半減期も異なる。[ヨウ素 131:8日、セシウム 137:30年、ストロンチウム 90:30年、プルトニウム 241:14年]
UCSB: “How Bad is the Reactor Meltdown in Japan?” by Benjamin Monreal: 16 March 2011
[日本語スライド:福島原発の放射能を理解する]
今後はいかなる放射性物質が含まれているかを明示することも必要になるだろう。
アメリカが無人機の Global Hawk で収集分析したデータはどうなっているのだろうか。
IAEA のような国際機関、データを収集したアメリカなどの協力も得て、毎日定時の分析を行い、それを公表することが必要な時期になっているのではないか。
事実関係が不明なまま事態は深刻化しているように思える・・・
3号機?とっくに壊れてる
技術者の方が既に指摘(https://sites.google.com/site/reportfujibayashi/)されているように、MOX燃料であることで危険性が高くなるとは思えません。プルトニウムは通常の低濃縮ウランを燃やしていても炉内に生成されるわけですし。
原子炉については(mac関連の話題とは違って)海外メディアが不確かな情報を基に報道しているような印象がありますが、普段から英字メディアを見ておられるshiroさんがどうお感じになっているのか一読者としては興味があるところです。
3号機が一部MOX燃料であることで特にリスクは増大しないようです。核生成物はウラン燃料とあまり変わらず有害性は同等のようです。それよりウラン燃料も核反応によりプルトニウムを生じますから、1〜6号機全てがプルトニウム汚染のリスクがあります。
一部ネットではMOX燃料のリスクを特別視してますが、プルトニウムのリスクがMOX燃料だけのように受け取られているように感じます。
”プルサーマル”はニュースで何度も報じられてきましたが一般の人は関心が薄く、いまになってMOX燃料はプルトニウムを混入と聞かされて恐怖を煽られているように感じます。
今回の地震津波被害は国内で大きなショックを与えたように思います。一方で福島原発の現状に関しては日本人は達観しているようにも見えます。
海外メディアの報道や個人的な知り合いなども含めてですが、どちらかと言えば海外(むしろ欧米?)で大きな騒ぎとなっているようにも見えます。
むろん今回の福島原発の問題が軽視されるべきではありませんが、これら原発の安全性の限界をどこに置くべきかなどは、頭から避けたり忌避するよりも目の前の現実として着実に乗り越えていかなくてはならないと思います。
NY タイムズの記事に関してもいずれ真偽のほどがわかるでしょう。
ただ、もしこれが根拠のない報道だった場合には、なにせNY タイムズだけに既存メディアの価値と言う点ではこちらも深刻かも知れません。
来るべき未来と言う観点からはこちらも重要かも知れないと思います。
[…] ◇ もし3号炉に亀裂があったら・・・ (via […]
NYTのアメリカでの位置づけは今一つ
分からないのですが、対日本と言うことであれば、
オオニシ記者のような名物記者が所属し反日的
記事を連発するという印象ですがね。
誤報も多いような印象なので、コメント無く記事
修正なども、いかにもなNYT的対応な気がします。
それはそれとして、格納容器には、亀裂とまで
いかないまでも、気体がパージされてしまう
隙間ぐらいはありそうだなと、個人的には
思います。又は東電が圧力を下げるため、
適当にパージしているか・・・。
もう少し経たないと本当のところは分かりませんね。
[…] もし3号炉に亀裂があったら・・・ [このものものしさは何?] […]
NaturalNews) Largely absent from most mainstream media reports on the Fukushima Daiichi nuclear disaster is the fact that a highly-dangerous “mixed-oxide” (MOX) fuel in present in six percent of the fuel rods at the plant’s Unit 3 reactor. Why is MOX a big deal? According to the Nuclear Information Resource Center (NIRS), this plutonium-uranium fuel mixture is far more dangerous than typical enriched uranium — a single milligram (mg) of MOX is as deadly as 2,000,000 mg of normal enriched uranium.
On March 14, Unit 3 of the Fukushima reactor exploded, sending a huge smoke plume into the air. This particular reactor, of course, contains the rods fueled with MOX. You can watch a clip of that explosion here:
http://www.youtube.com/watch?v=T_N-… [ソースチェック]
↑
既に外国のメディアでは3号炉が「プルトニュウム」を含んだMOX燃料が使われ、爆発し大気と海洋に放出したと報じている。その破壊力は他の炉の精製ウラニウムの2000000倍であると恐れている。
しかし日本では未だ東電も官房長官も今回の福岡第1でのプルトニュームとMOX燃料の存在を公表せず、その流出検査値は発表されていない。
Learn more: http://www.naturalnews.com/031736_plutonium_enriched_uranium.html#ixzz1J6zGMIRl [ソースチェック]