これまでアップルにとってプラスに働くと考えられてきたウワサマシンが、最近では重荷になってきていると Seb Janacek はいう。
Silicon.com: “Minority Report: Rumour mill killing Apple” by Seb Janacek: 04 February 2009
* * *
ウワサマシンは役に立った
アップルにとってウワサの力は大きく、自らのマーケティング部門より大きな役割を果たしてきた。そもそもマーケティング部門はどんな新製品を計画中なのか固く口を閉ざすことで有名だ。ある製品発表から Steve Jobs の次のキーノートまでの閑散期でも、熱狂的な関心が保たれるのはウワサのおかげだった。
The power of rumour did more for the company than its own marketing division, which itself was famously tight-lipped about products in the pipeline. The feverish interest used to sustain the company during the downtime between product releases and Steve Jobs keynotes.
ウワサマシンが最高潮に達するのはアップル恒例の年中行事のときだ。その時期になると新製品が姿を現すのをテクノロジー業界はじっと息をひそめて待つのだ。
The focal points for the Apple rumour mill were the company’s annual events, before which the tech world held its breath in anticipation of gadget revelation.
* * *
マック関連のイベントから撤退
しかしそれも終わりだ。アップルの恒例年中行事が減ってきているからだ。ニューヨークでイベントに参加したのは 2002 年が最後だったし、昨年末にはマックワールドに参加するのも 2009 年が最後になると発表した。
Not any more. The number of such Apple gatherings is dwindling. The company last attended the New York Macworld event in 2002 and late last year, it announced the 2009 Macworld would be the last one it attended.
残る大きなお祭りはといえば、6月のデベロッパ向けのイベントと、アップルが必要に応じて開くイベントだけになった。
All that remains now of big Apple fests are the June developer event and the gatherings it chooses to hold itself later in the year.
* * *
過剰な期待がダメージをもたらす
何故そのように縮小しているのか。あれほど重宝したイベントが、今や重荷になってきたからだ。アップルを中心に回っていたウワサマシンのコントロールが効かなくなった。のみならず、イベントに対する過剰な期待がダメージをもたらすほどになったからだ。
Why is Apple cutting down? The events – once such a boon – have become a rod for its own back. The rumour mill which orbited around them has spun out of control and is now damaging the company by setting expectations way too high ahead of events.
* * *
アナリストもウワサをまき散らす
熱に浮かされたような予測はフォーラムやブログだけではない。アナリストもまた架空のデバイスのウワサをまき散らすのだ。しかもその多くは予想が当たらないときている。
In addition to the feverish predictions on forums and blogs, the seeds of expectations for such fantastical devices are often planted by analysts, many of whom have a poor track record of predicting product releases.
* * *
アップル法務の強硬姿勢が変わった
2008 年にアップルは、リーク画像を掲載したサイトから画像を削除させようとする強硬姿勢を和らげた。それまではイベントのサプライズを損なう恐れがあるとしてアップル法務の姿勢は強硬だった。
In 2008, Apple relaxed its position on removing leaked images from the web, reversing its policy of setting its legal hounds on websites that dared to spoil the surprise.
* * *
前向きかつオープンになった上級幹部
アップルの上級幹部も、プレスやアナリストに対してよりオープンかつ前向きに対応するようになってきた。
The company’s own senior executives have also become more open and forthcoming with analysts and the press.
Jobs 自身、昨年ユニボディノートブックを発表した際、マックへのブルーレイ搭載、ネットブック、iPhone のデザインなどについてかなりオープンな発言をした。また、最近の決算発表のときも、CEO 代行の Tim Cook は将来の製品の方向について更なる発言をしている。
Jobs chatted quite openly about the prospects of Blu-ray in Macs, netbooks and iPhone form factors following the launch of new notebooks last year. Similarly, acting CEO Tim Cook further commented on future product directions at the most recent quarterly earnings call.
* * *
コントロールを取り戻す
大きなイベントへの参加の取りやめ、製品のリーク画像に対する寛大な態度、また上級幹部による直接説明の機会の増加・・・など、これらの変化は新製品に対する期待をコントロール可能な範囲に取り戻そうとする現れだと思われる。
Perhaps the abandonment of big events, the more relaxed approach on leaked product images and the briefings by senior executives are the company’s attempts to get expectation about new kit back under control again.
* * *
どうやらアップルの秘密主義は変わりつつあるようだ。
今年のマックワールドエキスポで Steve Jobs の代役を務めた Phil Schiller の発言も俄に真実味を帯びてくる。マックワールド直後にニューヨークタイムズの David Pogue が聞いたといわれる発言だ。
毎年1月に眩いばかりのショーをやることができなくなった、大量に製造し、みんなを圧倒するそんな製品を毎年出すことがもう持続不可能(unsustainable)になった、と。[Phil Schiller]
ウワサが過熱して手に負えなくなる過剰な期待と現実に発表できる製品とのギャップについて、アップルは本気で悩んでいるようだ。
★ →[原文を見る:Original Text]
* * *
[関連]
・maclalala2: “アップルは本気で CES への乗り換えを考えている?“: 11 January 2009
・New York Times: “A Strange Macworld Expo” by David Pogue: 08 January 2009
・maclalala2: “やっぱりアップルは netbook を考えている?“: 22 October 2008
・New York Times: “Read My Lips: Apple Is a Netbook Maker” by John Markoff: 21 October 2008
・maclalala2: “アップルは秘密主義をやめたのか“: 07 October 2008
・Daily Beast: “Not So Secret Apple” by Nicholas Ciarelli: 06 October 2008
Technorati Tags: Apple, Apple Event, Legal, Macworld, Phil Schiller, Rumor, Secretism, Steve Jobs, Tim Cook, Top Management
私は以前より、ここまでメジャーになっているのですから、Appleも秘密主義をやめた方が良いと常々、言って来た。
そろそろ、方向転換をやってくるようですね。
これはAppleにとって良いことだと思います。
> TORIO さん
画像リークや Hacintosh に対する対応も ずいぶん変わってきているようですね
普通の会社に 近づきつつあるということでしょうか・・・
[…] ウワサは結局プラスにならないとアップルが方針転換? « maclalala2 アップルにとってウワサの力は大きく、自らのマーケティング部門より大きな役割を果たしてきた。そもそもマーケティング部門はどんな新製品を計画中なのか固く口を閉ざすことで有名だ。ある製品発表から Steve Jobs の次のキーノートまでの閑散期でも、熱狂的な関心が保たれるのはウワサのおかげだった。 […]
たいへん的を得た指摘だと思います。
そりゃそうでしょう、架空の新製品のうわさがkeynote前に飛び交って、ないとわかるとブーブーブーなどというのは、アップルにしてみたら心外でしょう。秘密主義の変節ーーー製品計画をある程度オープンして、無責任な雑音を沈静化したいというのは分かる。
Unsustainableーーー要するにJobsの復帰以来、アップル、特に開発陣は全速力で走ってきて疲れたのではないでしょうか。倒産寸前の会社が奇跡の復活を来すためには、ずいぶん無理をしたのだと思う。最近のJobsのopen letterで、”はじめてMacworldの準備に忙殺されずに、年末を家族と過ごすことができた”というくだりが、妙に心に引っかかっていました。逆に言えばPhil Schillerには今回holiday seasonがなかったということになる。PhilはiPhoneの発表前夜に秘密厳守のため、なんでこんなに忙しいのか家族にさえ言えずにつらかった、とこぼしている。Tony Fadellも家族のためといって去っていった。
さて、アップルが開発チームの福利厚生をも気遣うフツウの会社になるとして、Mac communityは寛大になれるのかどうか(いますぐnetbookをだせーとかいってはならぬ)。
再びの登場失礼します。
方向転換?はある意味ジョブズ氏の影響力の低下の現れと見ています。昨日のTBS系「がっちりマンデーの儲かり秘話」をご覧になっていた方も多いと思いますが、出演者はジョブズ氏を独裁者とも言っていた。独裁者のジョブズ氏亡きあと(遅かれ早かれ、これはどの企業でも団体でも免れることは出来ない)は、集団指導体制をとることは必然の流れだと思います。
その辺りもAppleの幹部が考え始めたと言えるのではないでしょうか。
私は以前から指摘していたが、ここ数年Appleがイベントをする度に当日のApple株価は下落した。(ナスダック株の平均株価が上がった時でも下落した)ジョブズ氏激やせの影響もあったでしょうが。これもAppleはもちろん意識していたでしょう。
イベント前の期待が多き過ぎたのです。私もガッカリしたことが多い。
これからは、普通の会社のように、次に発売する製品を事前に発表せざるを得なくなってきた。
実際、私の知人・友人には新製品の秘密主義は嫌いという人も多い。
ウワサや想像で記事を書くのは私のブログでも今日から止めます。
> Arageo さん
たしかに Jobs の手紙では ご指摘の書き出しが気になりますね
企業としてのアップルが 変化するのは分るとして 問題はアップルファンボーイだという点も なるほどそうですね
新しい携帯ネット端末 ないしはネットブックのウワサとなると ついつい自分でも ガマン出来なくなってしまう体たらくですから・・・
> TORIO さん
ウワサを取り上げない ですか・・・
う〜ん 迷ってしまいますね
でもこのところ Jobs 不在で アップルの株価が 100 ドルを回復したのは たしかに事実ですね