[アップルに対する Braun の影響をどう見るか:image]
裁判に勝ったアップルに対して、アップルだって Braun のマネじゃないかという議論がある。
Scenarios and Strategy: “Prior Art…“: 05 September 2012
John Gruber の反論が興味深い。これは「敬意」と「盗用」の違いだと・・・
Daring Fireball: “Homage vs. Rip-Off” by John Gruber: 05 September 2012
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偽善的アップル
アップル製品とかつての Braun 製品を並べて比較することが流行っている。アップルは偽善的企業だ — サムスンがアップルのザインを盗んだと非難し裁判を起こす一方で、アップル自身は明らかに Braun から繰り返し盗んでいるではないかというのだ。
This comparison between a bunch of modern Apple devices and older products from Braun is making the rounds, the idea being that Apple is a corporate hypocrite for decrying and suing the pants off Samsung for ripping off Apple’s designs when it’s clear that Apple itself has repeatedly ripped off Braun.
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「敬意」と「盗用」の違い
これは「敬意」(homage)と「盗用」(rip-off)の主観的相違だ。誰かのマネをするのは敬意を払うことで、誰かにマネされたら盗用されたのだというのは古いジョークだが、私の考えでは、これは何か新しいものを造り出したいというインスピレーションを得ることと、マネをしてひたすら模倣製品を作ろうとすることの違いだと思う。これこそ偉大なアーチストは盗み、悪いアーチストはマネることの違いなのだ。アップル製品は、比較されたブラウン製品とは異なるカテゴリーのものであり、時間的にもその間数十年が経っている。しかしインスピレーションを受けたことは否定しようがない。Jony Ive 自身が影響を受けたことを直ちに認めている。自分は以前 iPhone 4 のレビューでこう書いた。
This is the subjective line between homage and rip-off. The old joke is that homage is when you copy someone else; a rip-off is when someone else copies you. But to me, it’s about the difference between drawing inspiration to create something new, versus slavishly copying to create something derivative. That’s the difference between great artists stealing and bad artists copying. Apple’s products are in different categories than the corresponding Braun devices, and are separated by decades. But there’s no denying the inspiration. Jony Ive himself has readily acknowledged the influence. In my iPhone 4 review, I wrote:
仕上がり具合(build quality)は全体的に信じられないほど優れている。iPhone 4 は、高価な芸術品のように、見かけも手触りも美しい。まるで Dieter Rams へのラブレターのようだ。
The overall build quality seems impossibly good. The iPhone 4 is beautiful to behold and feels like a valuable artifact. It’s like a love letter to Dieter Rams.
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Dieter Rams はどう受け取ったか
Rams 自身アップルの作品に利用されたのではなく、褒められて光栄に思っている(flattered)ようだ。2011 年の The Telegraph 紙に彼はこう書いている。
And Rams himself seems flattered by Apple’s work, not taken advantage of. Writing for The Telegraph in 2011:
私はいつもアップル製品と — そして自分の作品に対して Jony Ive が語った丁重なことばを、自分に対する賛辞(compliment)だと受け止めてきた。優れたデザインの力を真に理解し、自社の製品やビジネスに活かしている企業は間違いなく限られている。
I have always regarded Apple products — and the kind words Jony Ive has said about me and my work — as a compliment. Without doubt there are few companies in the world that genuinely understand and practise the power of good design in their products and their businesses.
Gary Hustwit のドキュメンタリー Objectified で、アップルについて Rams が述べたことばにも明らかだ。
Or see Rams’s remarks on Apple in Gary Hustwit’s Objectified documentary.
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果たしてひとりでもいるか
サムスンにマネされたことで光栄に感じるアップルのデザイナーはひとりもいないと思う。また逆に、自らの作品をアップルに対する敬意と感じるサムスンのデザイナーもひとりもいないと思う。
I very much doubt there is a single designer at Apple who has felt flattered by Samsung. And, on the flip side, I doubt there is a single designer at Samsung who sees their work as homage to Apple.
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ここには裁判で争われたことの本質的意味がある・・・
★ →[原文を見る:Original Text]
サムソンには敬意のかけらも感じられない。
法律の専門家が何と言ってるか知らないが、陪審員はそれを正しく見抜いたのだ。
[…] マネか、マネでないか « maclalala2. […]
大学生の頃、文化人類学のレポートを書くのに、日本で働く韓国人にインタビューをしたことがある。その頃はサムスンの電子産業は大きな産業ではなかった。彼はイ・ゴンスと話したことがあり、その際、イ・ゴンスはサムスンを韓国版SONYにしたいと言っていたそうだ。SONYはAppleにデザインを参考にされ、大変光栄に思っていると思う。Braunの元デザイナーも同じだろう。そうやって、先進国の産業デザインはお互いをレスペクトしながらやってきた。どの国にも他国の模倣をする時期があってしかるべきだと思うが、その時期を脱したとき、オリジナルなイノベーションが生まれるんだと思う。しかし、そういう感覚が韓国人にはわからないんだと思う。サムスンのデザインを模倣やレスペクとしようなんてデザイナーは世界のどこにもいないだろうし。イ・ゴンスはSONYではなくて、マネシタ電気を模倣してしまったんだろうなw
いつもセンスのいいチョイスと見やすいデザインで、参考になります。
サムスンのパクリに、Appleに対する敵意こそあれ尊敬の念は微塵もないのは明らかですね。家電で言えばエアコンや冷蔵庫に至るまで、ヒュンダイの自動車など日本製品そっくり。でも、iPhoneなみに売れているという現実は消費者に真贋を見分ける感覚がないことを示しています。安さだけかもしれませんが。買う人がいるから売れる、消費者も賢くならないと。
日本企業も70年代迄は世界の優秀な製品をパクリまくってましたが、流石に今はおおっぴらにやれないですね。韓国企業も早く卒業して欲しいです。あれだけの技術力があって、それにクリエイティヴィティが加わったら日本企業が更に追いつけなくなる(笑)。
Dieter Ramsの言葉を読んで不覚にも涙が出てしまいました。記事の主旨から離れてしまってすみません。旧態依然とした組織に飲み込まれ,もがいている自分なんです。でも必ずそこから抜け出して「間違いなく限られている」組織をつくりあげ,社会に貢献する。そのような決意を新たにしました。シローさん,ありがとうございました。