[ホームページへのアクセスは減少の一途をたどっている:chart]
新聞の凋落が語られて久しい。
デジタル時代のあるべき姿を模索した NY タイムズ紙の内部調査報告書が流出して話題になっている。
Quartz: “The homepage is dead, and the social web has won—even at the New York Times” by Zachary M. Seward: 15 May 2014
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ホームページからアクセスする読者は減少の一途をたどっている
NY タイムズ紙のデジタル戦略に関する内部調査報告書によれば、新聞の顔にあたるホームページからアクセスする読者の数はこの2年間で半減している。冒頭のチャートがはっきりそれを物語っている。
Traffic to the New York Times homepage fell by half in the last two years, according to the newspaper’s internal review of its digital strategy. Here’s the very stark chart:
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ニュースを読む習慣が変わった
これは NY タイムズの問題点を反映したものというより、インターネットでニュースがどのように伝播するかという現実と関係している。ほとんどのニュースサイトでホームページへのアクセスが減少しているが、これは記事にアクセスするのに読者がソーシャルメディアやEメールなどの情報に頼るようになったからだ。(手前味噌をいえば、Quartz にホームページらしきものがないのはこの傾向を認識してのことだ。)NY タイムズ紙へのアクセスは全体として減少している。多くの場合アクセスは「勝手口」からきているのだ。
That’s not necessarily a reflection of any problems at the Times but the reality of how news is now distributed on the internet. Homepage traffic is declining at most news sites as readers increasingly find links to news articles from social media, email, and other sources. (This may be a self-serving argument: Quartz barely has a homepage at all, in recognition of this trend.) Overall traffic to the Times isn’t falling; it’s just coming in through the “side door” more often.
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ホームページが抱える問題
NY タイムズの内部報告書を入手した BuzzFeed は、この文書のことを新聞業界における数少ない「破壊的イノベーター」と呼んでいる。(この報告のためにインタビューを受けた何億兆ものひとのリストが8ページに掲載されており、自分ものそのひとり。) この報告書ではホームページが抱える問題を次のようにまとめている。
The Times’ internal report was obtained by BuzzFeed, which the document describes as among a few “disruptive innovators” in the news business. (I was among a gazillion people interviewed for the report; they are listed on page 8.) The document describes the homepage situation this way:
「ホームページへのアクセスはこの数年間というもの毎月毎月減少してきている。各セクションのトップ画面へのアクセスもほとんどない。モバイルアプリへのアクセスも、ホームページやセクション画面へのアクセスとほぼ同じく、これまた減ってきている。」
Traffic to the home page has been declining, month after month, for years. Traffic to section fronts is negligible. Traffic on our mobile apps, which are mostly downstream replicas of our home page and section fronts, has declined, as well.
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[ニュースは定時ではなく、必要なときに読む:chart]
プル型メディア
モバイルアプリの利用者の減少も顕著だが、たぶんそれも関係しているのだろう。ホームページもセクション画面もアプリも、どれも「プル型メディア」(pull media)だ。すなわち、読者が積極的にクリックして探しにいくタイプだ。しかし新しい読者にとってニュースを読むのは習慣でもなんでもない。自分がプレゼンテーションでよく使う上図のチャートもそれを示している。
The decline in mobile app usage is also significant, but probably related. Home pages, section fronts, and apps are pull media—that is, they rely on readers actively requesting them. But the new news habit is no habit at all, as demonstrated by this chart I sometimes use in presentations:
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プッシュ型メディア
プル型メディアは急速に「プッシュ型メディア」(push media)に取って代わられている。NY タイムズの報告書はそのことを多言を用いて明らかにしているのだ。情報(アップデート情報にしろ、友人の写真や Solange のビデオ、そして時には新聞記事ですら)、情報の方が読者を見つけるのだ。そうでないメディアはまったく伝わらない。
Pull media has quickly been replaced by push media, as the Times report makes clear in so many words. Information—status updates, photos of your friends, videos of Solange, and sometimes even news articles—come at you; they find you. And media that don’t are hardly found at all.
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ニュースの方がやってくるというのはけだし名言だろう。
新聞といえば朝一番に広げて見るのが古き良き時代の習慣だった。まず第一面、そして経済面、社会面などセクション面に進むものだった。
だから新聞社は第一面に特色を出すことにこだわった。第一面こそ新聞の顔なのだ。
しかし読者の習慣はとっくに変わってしまった。ソーシャルメディアを通じて自分からやって来るニュースをクリックするだけだ。
筆者の場合を振り返っても、記事を探すのに第一面から飛んで行ったのは何時のことだったか思い出せない。
読者の習慣は変わってしまったのに、編集する側は未だ紙媒体の時代から抜け出せないでいる。
新聞を編集する側のメンタリティーが変わらなければ、デジタル版やモバイルアプリを作ったとて何ら変わるところはない。
(それに加えて日本の場合は、デジタル版はあくまでも読者を紙媒体に誘導するための手段に過ぎず、紙媒体に比べて内容も薄い。しかも一定の時間が経てばニュース自体が姿を消す運命にある。)
そんな状況が変わらないかぎり新聞の凋落は止まるところがないことを NY タイムズの報告書は教えているのではないか。
・・・と、そこまで考えて、待てよと思った。
ホーム画面が意味をなさなくなっているのはブログでも同じではないか、と・・・
たしかに当ブログでも、アグリゲータやツイッター、検索画面経由で訪れてくださる読者の方が圧倒的に多い。
読者の習慣が変わったのはニュースだけではないのかもしれない・・・
★ →[原文を見る:Original Text]