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[ホームページへのアクセスは減少の一途をたどっている:chart

新聞の凋落が語られて久しい。

デジタル時代のあるべき姿を模索した NY タイムズ紙の内部調査報告書が流出して話題になっている

Quartz: “The homepage is dead, and the social web has won—even at the New York Times” by Zachary M. Seward: 15 May 2014

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ホームページからアクセスする読者は減少の一途をたどっている

NY タイムズ紙のデジタル戦略に関する内部調査報告書によれば、新聞の顔にあたるホームページからアクセスする読者の数はこの2年間で半減している。冒頭のチャートがはっきりそれを物語っている。

Traffic to the New York Times homepage fell by half in the last two years, according to the newspaper’s internal review of its digital strategy. Here’s the very stark chart:

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ニュースを読む習慣が変わった

これは NY タイムズの問題点を反映したものというより、インターネットでニュースがどのように伝播するかという現実と関係している。ほとんどのニュースサイトでホームページへのアクセスが減少しているが、これは記事にアクセスするのに読者がソーシャルメディアやEメールなどの情報に頼るようになったからだ。(手前味噌をいえば、Quartz にホームページらしきものがないのはこの傾向を認識してのことだ。)NY タイムズ紙へのアクセスは全体として減少している。多くの場合アクセスは「勝手口」からきているのだ。

That’s not necessarily a reflection of any problems at the Times but the reality of how news is now distributed on the internet. Homepage traffic is declining at most news sites as readers increasingly find links to news articles from social media, email, and other sources. (This may be a self-serving argument: Quartz barely has a homepage at all, in recognition of this trend.) Overall traffic to the Times isn’t falling; it’s just coming in through the “side door” more often.

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ホームページが抱える問題

NY タイムズの内部報告書を入手した BuzzFeed は、この文書のことを新聞業界における数少ない「破壊的イノベーター」と呼んでいる。(この報告のためにインタビューを受けた何億兆ものひとのリストが8ページに掲載されており、自分ものそのひとり。) この報告書ではホームページが抱える問題を次のようにまとめている。

The Times’ internal report was obtained by BuzzFeed, which the document describes as among a few “disruptive innovators” in the news business. (I was among a gazillion people interviewed for the report; they are listed on page 8.) The document describes the homepage situation this way:

「ホームページへのアクセスはこの数年間というもの毎月毎月減少してきている。各セクションのトップ画面へのアクセスもほとんどない。モバイルアプリへのアクセスも、ホームページやセクション画面へのアクセスとほぼ同じく、これまた減ってきている。」

Traffic to the home page has been declining, month after month, for years. Traffic to section fronts is negligible. Traffic on our mobile apps, which are mostly downstream replicas of our home page and section fronts, has declined, as well.

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[ニュースは定時ではなく、必要なときに読む:chart

プル型メディア

モバイルアプリの利用者の減少も顕著だが、たぶんそれも関係しているのだろう。ホームページもセクション画面もアプリも、どれも「プル型メディア」(pull media)だ。すなわち、読者が積極的にクリックして探しにいくタイプだ。しかし新しい読者にとってニュースを読むのは習慣でもなんでもない。自分がプレゼンテーションでよく使う上図のチャートもそれを示している。

The decline in mobile app usage is also significant, but probably related. Home pages, section fronts, and apps are pull media—that is, they rely on readers actively requesting them. But the new news habit is no habit at all, as demonstrated by this chart I sometimes use in presentations:

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プッシュ型メディア

プル型メディアは急速に「プッシュ型メディア」(push media)に取って代わられている。NY タイムズの報告書はそのことを多言を用いて明らかにしているのだ。情報(アップデート情報にしろ、友人の写真や Solange のビデオ、そして時には新聞記事ですら)、情報の方が読者を見つけるのだ。そうでないメディアはまったく伝わらない。

Pull media has quickly been replaced by push media, as the Times report makes clear in so many words. Information—status updates, photos of your friends, videos of Solange, and sometimes even news articles—come at you; they find you. And media that don’t are hardly found at all.

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ニュースの方がやってくるというのはけだし名言だろう。

新聞といえば朝一番に広げて見るのが古き良き時代の習慣だった。まず第一面、そして経済面、社会面などセクション面に進むものだった。

だから新聞社は第一面に特色を出すことにこだわった。第一面こそ新聞の顔なのだ。

しかし読者の習慣はとっくに変わってしまった。ソーシャルメディアを通じて自分からやって来るニュースをクリックするだけだ。

筆者の場合を振り返っても、記事を探すのに第一面から飛んで行ったのは何時のことだったか思い出せない。

読者の習慣は変わってしまったのに、編集する側は未だ紙媒体の時代から抜け出せないでいる。

新聞を編集する側のメンタリティーが変わらなければ、デジタル版やモバイルアプリを作ったとて何ら変わるところはない。

(それに加えて日本の場合は、デジタル版はあくまでも読者を紙媒体に誘導するための手段に過ぎず、紙媒体に比べて内容も薄い。しかも一定の時間が経てばニュース自体が姿を消す運命にある。)

そんな状況が変わらないかぎり新聞の凋落は止まるところがないことを NY タイムズの報告書は教えているのではないか。

・・・と、そこまで考えて、待てよと思った。

ホーム画面が意味をなさなくなっているのはブログでも同じではないか、と・・・

たしかに当ブログでも、アグリゲータやツイッター、検索画面経由で訪れてくださる読者の方が圧倒的に多い。

読者の習慣が変わったのはニュースだけではないのかもしれない・・・

★ →[原文を見る:Original Text

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Joe_Nocera

[NY タイムズ Joe Nocera 記者:photo

Tim Cook の議会証言の後、追い討ちをかけるように NY タイムズの Joe Nocera 記者が Cook は嘘つきだと書いている。

たまりかねた Philip Elmer-DeWitt が事実に反すると反論。「Joe Nocera がまたやった」と・・・

Fortune Tech: “Joe Nocera does it again” by Philip Elmer-DeWitt: 23 May 2013

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嘘つき

NY タイムズの Op-Ed 欄で、Joe Nocera は Cook のことを嘘つき呼ばわりしている

On the New York Times Op-Ed page he calls Apple CEO Tim Cook a liar.

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「大ウソ」・「真っ赤なウソ」

アップルに関する Nocera のいちばん新しいコラムで特筆すべきは、彼が Tim Cook のことを嘘つきと呼んだことだ。宣誓にも関わらず Cook が「大ウソ」(whopper)や「真っ赤なウソ」(flat-out lie)をついたと非難している。

But what will be remembered about Nocera’s latest Apple column is that he called Tim Cook a liar — accusing him of telling, under oath, a “whopper” and a “flat-out lie.”

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Cook 証言をほんとに見たのか

そう非難するのは Cook の証言を見た後であることを、Nocera は明言しないまでも暗に匂わせている。

Nocera implies, but doesn’t actually say, that he makes those charges after watching Cook’s testimony.

私も Cook の証言を見た、それも2度も。Nocera がほんとに見たとはとても信じられない。彼が引用している書類や記事も読んだが、事実関係で彼が Cook と違うのは、むしろ Nocera の方が間違っているのではないかと思う。

I watched Cook’s testimony — twice. I find it hard to believe that Nocera saw any of it. And having read the documents and news articles he cites, I believe that on the points with which he has factual disagreements with Cook, he’s provably wrong.

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事実関係の誤りを指摘した後、Elmer-DeWitt は次のようにまとめる。

Nocera 自身の大ウソ

先にも触れたように Nocera がアップルをフォローした経歴は長い。その中には — 彼の弁護のためにいえば — 「真っ赤なウソ」も含まれている。最大の大ウソは、ジョブズがガンではないと断言したという2008 年の Nocera の記事だろう。

As I say, Nocera has a long history with Apple — a history, in his defense, that includes being told some flat-out lies. The biggest whopper was probably the one Steve Jobs told him in 2008 when, according to Nocera, Jobs assured him that he didn’t have cancer.

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「インチキ野郎」

ジョブズからの電話についてまとめた 2008年の記事で、ジョブズと Nocera の関係が彼自身のことばでよく捉えられている。

It was Nocera’s 2008 account of that phone call with Jobs that captured, in two sentences, the essence of their relationship:

「こちらは Steve Jobs だが」と彼は切り出した。「キミはボクのことを傲慢な****(4文字罵り言葉)野郎で、自分のことを超法規的存在と考えているヤツだとでも思っているのだろう。キミはインチキ野郎(slime bucket)で、書いていることはほとんど間違いだと思う。」

“This is Steve Jobs,” [Jobs] began. “You think I’m an arrogant [expletive] who thinks he’s above the law, and I think you’re a slime bucket who gets most of his facts wrong.”

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sen_carl_levin

[米上院常設調査小委員会委員長 Carl Levin 上院議員:photo

Cook の議会証言について第一印象を書いたときはまだ証言ビデオを見ていなかった。

その後 C-SPAN ビデオで詳しく見ることができた。NY タイムズのライブブログでは分からない細かいニュアンスがよく分かる。

Offshore Profit Sharing, Panel 2 | C-SPAN Video Library

老練な政治家が大企業トップをギリギリ絞り上げる様子がよく見て取れる。Cook とそのチームは誠実かつ真摯に対応していると思う。

米上院常設調査小委員会の追求のポイントは、アップルが本来収めるべき税金をアイルランドの子会社という隠れ蓑を使って不当に隠したという点にある。

tim_cook_testimony

[真摯に答える Tim Cook:photo

Cook チームはなんら税法に違反するところはないと何度も繰り返し主張する。小委員会は最後までそれを崩せない。

一時休憩にはいるまでの20分間はなかなかの見ものだ。

Nocera 記者の記事は米上院小委の側に立って書いているとしか思えない。[追記:というか、同小委がアップルの脱税疑惑をとりあげるキッカケになったのは NY タイムズの記事だったともいわれる。]

NY タイムズ自身が、「ライオンの巣窟」に入ったが最後には 「Cook に手なずけられた」と書いたも関わらず、更に尚 Cook は嘘つきだと追い討ちをかけたのはなぜなのか。そこに何らかの意図を感じずにはいられない。

Nocera の記事を批判したのは Elmer-DeWitt だけではない。TUAW もさらに詳しくその間違いを追求している。

ひと昔前なら大新聞の記者が書けばそれでまかり通った。

しかしあまりにヒドすぎる内容は大新聞といえどもみんなが見過ごさなくなった。

大新聞に比べればマイナーなブロガーたちも今や黙ってはいない・・・今回の顛末を見てそんなことを考えた。

★ →[原文を見る:Original Text

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Update:輪転機を止めろ!》


[アップルが支払う税金はごく僅か:image

Foxconn の搾取労働を扱った NY タイムズの「iEconomy シリーズ」は物議をかもしたが、またその続編が出た。

今度は税金の話だ。アップルがあの手この手を駆使して税金逃れをしているという強烈な内容だ。

米国内だけでなく香港、アムステルダム、ルクセンブルグ、シンガポール、バージンアイランドまでカバーした 4000 語近い長文記事だ。

NYTimes.com: “Apple’s Tax Strategy Aims at Low-Tax States and Nations” by Charles Duhigg and David Kocieniewski: 28 April 2012

全文を読通すのはなかなか困難だが、幸い市村佐登美氏が全体を訳出しておられるので、関心のある方はぜひどうぞ。[以下日本語は市村佐登美訳による。]

Long Tail World: “アップルの十億ドル単位の税逃れ術:How Apple Sidesteps Billions in Taxes @nytimes” by 市村佐登美: 30 April 2012

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あの手この手の税金逃れ

アップル本社はカリフォルニア州クパティーノにある。そこからわずか200マイル(322km)離れたリノ市内にオフィスを構えて企業の収益をここに集め、投資に回すことで、アップルは収益の一部にかかる州の法人税を回避しているのだ。

Apple’s headquarters are in Cupertino, Calif. By putting an office in Reno, just 200 miles away, to collect and invest the company’s profits, Apple sidesteps state income taxes on some of those gains.

カリフォルニアの法人税率は8.84%。ネバダは? ゼロ。

California’s corporate tax rate is 8.84 percent. Nevada’s? Zero.

リノに会社を置く以外にもアップルは法が許す範囲であの手この手を駆使して毎年世界中で何十億ドルという節税を行なっている。

Setting up an office in Reno is just one of many legal methods Apple uses to reduce its worldwide tax bill by billions of dollars each year.

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リノだけでなく、「世界を股にかけた税減らし」をやっており、事業収益をアイルランドの子会社、オランダ経由で(無税地帯の)カリブ諸国に移転させることで節税を行う「ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチ(Double Irish With a Dutch Sandwich)」という会計テクニックまで開発したと微に入り細を穿っている。

前回の Foxconn をめぐる iEconomy シリーズが紙面に載ったのは、アップルが桁外れの歴史的決算発表をした直後だった。

今回もまた、純利益が 94% 増(前年同期比)という驚異的決算発表の後というタイミングだ。

頂点に立つ者は常に激しい風を受けるということか・・・

そういえば米司法省による電子書籍をめぐる独禁法訴訟も話題になっている。

絶好調の業績のせいでなにかと標的にされることが多くなったアップルだ・・・

★ →[原文を見る:New York Times
★ →[日本語訳:Long Tail World

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《Update》輪転機を止めろ!


[Stop the presses!:image

税金逃れという NY タイムズの記事にアップルが直ちに反論した。そのほか同記事の不正確さを指摘する反論もあってに賑やかになってきた。

この記事が取り上げられるに至った背景を Joy of Tech が想像しているのがオモシロい。

New York Times editorial meeting | The Joy of Tech

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NY タイムズの編集会議

ねえボス、悪質な多国籍企業のスゴい話があるんだけど・・・

Hey Boss, I have this great story about evil multinational corporations.

つまらん。使い古されたネタだ。

Meh, sounds like old hat.

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労働者の搾取、政府の弱い者いじめ、環境汚染についても詳しく触れて・・・

It details widespread worker abuse, the bullying of governments, and environmental pollution.

つまらん、つまらん、つまらん!

Boring. Boring. Boring!

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それに、世界を股をかけて何十億ドルも税金逃れしていることも暴いて・・・

But it includes an exposé on how these companies move money offshore to evade paying billions in taxes!

ダメ。数えきれないほど記事にしたよ。

Forget it kid. It’s been done a billion times before.

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じゃあ、「多国籍企業」じゃなく「アップル」としたらどう?

How about I change the copy from “Multinational corporations” to “Apple”?

(重大ニュースだ!)輪転機を止めろ!

STOP THE PRESSES!

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如何にもさもありなんと思わせるところがミソ・・・

[via Daring Fireball, The Loop

★→[イラストを見る:Joy of Tech

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[Mike Daisey:photo

Steve Jobs が亡くなった翌日の10月6日、NY タイムズが Mike Daisey の投稿を載せた。

「追悼の気持ちには反するが」(Against Nostalgia)というタイトルの記事は次のような文章で始まる。

Daring Fireball: “Daring Fireball Linked List: ‘This American Life’ Isn’t the Only Outfit With Retractions Due” by John Gruber: 16 March 2012

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直接労働者を取材した

私は中国南部を旅して、エレクトロニクス工場の労働者のインタビューをしたことがある。アップルのラップトップや iPad を組み立てる Foxconn 工場の金属プレスで右手がつぶれてかぎ爪のようになった男性とも話をした。自分の iPad を見せると、彼は息をのんだ。電源を入れた iPad は見たことがなかったからだ。彼はスクリーンを撫で、ピクセルの細部にまでアップルがこだわったアイコンが左右にスライドするのに目を見張った。「まるで魔法みたいだ」と私の通訳に語った。

I have traveled to southern China and interviewed workers employed in the production of electronics. I spoke with a man whose right hand was permanently curled into a claw from being smashed in a metal press at Foxconn, where he worked assembling Apple laptops and iPads. I showed him my iPad, and he gasped because he’d never seen one turned on. He stroked the screen and marveled at the icons sliding back and forth, the Apple attention to detail in every pixel. He told my translator, “It’s a kind of magic.”

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そんな Mike Daisey の「突撃取材」はウソだった。

公共放送「This American Life」の Daisey の突撃取材を聞いた中国駐在の Rob Schmitz が疑問を持ったのだ。Schmitz は中国のサプライチェーン事情に詳しい。彼は Daisey の通訳をしたという女性 Cathy を探し出してその証言を取った。

その上で Daisey 本人と対決した。

Marketplace: “An acclaimed Apple critic made up the details” by Rob Schmitz: 16 March 2012

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Daisey 本人との対決

先週私は、「This American Life」番組のホスト Ira Glass と一緒に、Mike Daisey と直接インタビューで対決した。彼が会ったというノルマルヘキサン中毒の労働者の話を取り上げた。彼に Cathy のいったことを伝えた。

Last week, together with Ira Glass, the host of This American Life Host, I confronted Daisey in an interview. I brought up the workers he says he met who were poisoned by N-hexane. I tell him what Cathy said.

Rob Schmitz:Cathy は、アナタがヘキサン中毒になった労働者とは話をしなかったといっています。

Rob Schmitz: Cathy says you did not talk to workers who were poisoned with hexane.

Mike Daisey:そのとおりです。

Mike Daisey: That’s correct.

Schmitz:ウソをついたということですか? 実際に見たことではなかったと。

RS: So you lied about that? That wasn’t what you saw?

Daisey:そうはいわないと思います。

MD: I wouldn’t express it that way.

Schmitz:じゃあ、どういうのですか?

RS: How would you express it?

Daisey:私は、旅行全体の印象について話をしたかっただけといいたいのです。

MD: I would say that I wanted to tell a story that captured the totality of my trip.

Ira Glass:労働者に会ったというのはそういうことだったのですか? それともこの問題について読んだだけだった?

Ira Glass: Did you meet workers like that? Or did you just read about the issue?

Daisey:労働者に会ったことは会ったのです。ただし香港で、アップルに抗議に行く人たちで、ヘキサン中毒になったひとではなく、そうなったのを知っているひとたちでした。そんな労働者の間でしょっちゅう交わされていた会話でした。

MD: I met workers in, um, Hong Kong, going to Apple protests who had not been poisoned by hexane but had known people who had been, and it was a constant conversation among those workers.

Ira Glass:実際にヘキサン中毒の労働者と会ったワケではなかった?

IG: So you didn’t meet an actual worker who’d been poisoned by hexane.

Daisey:そのとおりです。

MD: That’s correct.

Daisey は Ira Glass および視聴者に真実を話さなかったことを謝罪した。

Daisey apologized to Ira Glass for not telling the truth to him and his listeners.

「確かにみんなに聞いてもらいたい一心で端折ったところがなかったとはいわない。しかし自分の仕事には自信を持っている。自分の過ちは — 心から反省しているが — アナタの番組でニュース(journalism)として扱わせたことだ。決してニュースではなく、舞台作品(theater)なのだ」と Daisey はいう。

“Look. I’m not going to say that I didn’t take a few shortcuts in my passion to be heard. But I stand behind the work,” Daisey said. “My mistake, the mistake I truly regret, is that I had it on your show as journalism. And it’s not journalism. It’s theater.”

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以上の内容は Daisey 本人の肉声を含めて上記 Marketplace のサイトで聞くことができる。

「This American Life」始まって以来のヒット番組だったが、 Daisey の告白を踏まえて番組そのものを撤回した。

This American Life: “Retracting ‘Mr. Daisey and the Apple Factory’“: 16 March 2012

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一方 NY タイムズは、オリジナル記事の関連部分[注:冒頭で紹介した直接取材の部分]を削除しただけだ。そのやり方にJohn Gruber が強く反発している。

Daring Fireball: “Daring Fireball Linked List: ‘This American Life’ Isn’t the Only Outfit With Retractions Due” by John Gruber: 16 March 2012
NYTimes.com: “Against Nostalgia” by Mike Daisey: 06 October 2011

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疑問が生じたので

追記:NY タイムズは上記の部分を記事から削除し、次の【編集者注】を載せた。

UPDATE, 30 MINUTES LATER: The Times has now removed the above paragraph from the piece, and prepended this editor’s note:

【編集者注】オリジナル記事の冒頭のパラグラフについて疑問が生じた。アップルの中国工場における労働条件について話をしたという部分の信憑性の問題だ。当該パラグラフは新しいバージョンでは削除されている。

Editor’s Note: Questions have been raised about the truth of a paragraph in the original version of this article that purported to talk about conditions at Apple’s factory in China. That paragraph has been removed from this version of the article.

これで終わったワケじゃない。「疑問が生じた」だけの話ではない。これが完全な作り話だと Daisey は認めたのだ。当該パラグラフが主張していることに触れないで、単に削除するだけなんてインチキじゃないか。

This isn’t over. “Questions” haven’t just been raised — Daisey has admitted it was a complete fabrication. Sort of a bogus move to pull the paragraph without saying what the paragraph claimed.

Archive.org にも、グーグルにもオリジナル記事のキャッシュは残っていない。

Neither Archive.org nor Google have cached versions of the original piece.

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今にして考えれば NY タイムズと「This American Life」が一連のアップルバッシングの始まりだった。

第3世代 iPad の世界同時発売の日に事態は大きな展開を見せたが、波紋が収まるにはしばらく時間がかかりそうだ。

★ →[原文を見る:Original Text

✂ →[短縮 URL]http://wp.me/pfXBS-1Mj
   〈短縮 URL についてはこちらを参照〉

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《参考》Mike Daisey 関連記事

・Daisey の突撃取材

デイジー氏アップル工場へ行く | maclalala2

・突撃取材の舞台裏

An acclaimed Apple critic made up the details | Marketplace

・番組の撤回

Retracting “Mr. Daisey and the Apple Factory” | This American Life

・NY タイムズの反応

Steve Jobs, Enemy of Nostalgia | NYTimes.com
‘This American Life’ Isn’t the Only Outfit With Retractions Due | Daring Fireball

・本人の反論

Statement on TAL | Mike Daisey

・メディアの反応

This American Life Pulls Mike Daisey’s Story about Apple’s Labor Abuses in China Because Daisey Played Fast and Loose With the Facts | Slog
Excerpts from ‘This American Life’ on Mike Daisey: ‘Why not just tell us what really happened?’ | The Verge
This American Life Retracts Its Damning Episode About Apple And Foxconn | Silicon Alley Insider
Apple factory critic lied about what he saw | The Loop
The Retraction Hammer Comes Down | parislemon

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[巨人ゴリアテに立ち向かうダビデ:image

この冬は寒さがこたえる。

アップルの快進撃は寒さなぞものともしないが、少し気懸かりな点もある。

アップルに対するきびしい見方が出始めたように思えるからだ。

アップル製品はなぜ中国で作られるのか?」という NY タイムズの記事は、アメリカの製造業が技術と雇用の面でいかに空洞化したかをアップルをケーススタディとして分析した優れた記事だった。

しかしその後同紙に現れた「中国の低賃金はアップル製品に織り込み済み」という長文記事ははっきりとトーンが異なる。誰にも愛される iPad が過酷な低賃金搾取労働の象徴だというのだ。

NYTimes.com: “Apple’s iPad and the Human Costs for Workers in China” by Charles Duhigg and David Barboza: 25 January 2012
TechCrunch Japan: “汚れた金か?―ニューヨーク・タイムズのApple記事を考える” by Devin Coldewey: 26 January 2012[滑川海彦 訳]

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同じ NY タイムズで何が変わったのか。この2つの記事の間に何があったのか。

先週1月24日にアップルから発表された最新の業績発表はすべてのひとの度肝を抜くものだった。その桁外れの業績が NY タイムズ報道に影響しているのではないかという気がしてならない。

アップル: “Apple、第1四半期の業績を発表” [Press Info]: 24 January 2012
Apple: “Conference Call – 2012 Financial Results, Quarter 1“: 24 January 2012
Seeking Alpha: “Apple’s CEO Discusses Q1 2012 Results – Earnings Call Transcript“: 24 January 2012

企業の業績は1年毎ではなく今や四半期(Quarter)という短いベースで評価される。その結果にウォール街は一喜一憂する。

クリスマスという絶好調期を含んだ四半期だったとはいえ、アップルが叩き出した利益は予想どおり桁外れのものだった。

アメリカ企業にとって過去最大の当期純利益は ExxonMobil が 2008 年末に石油価格の高騰のさなかに叩き出した 148 億ドルだ。すべての業種にわたってこれが歴史上過去最高の記録だ。

CNNMoneyTech: “The Second-Most-Profitable Quarter in Any Company’s History” by David Goldman: 24 January 2012

今回の130 億ドルというアップルの純利益はこれに次ぐ歴史上2番目の記録だ。1兆円を超える純利益が 2011 年10月〜12月の3か月で叩き出されたことになる。歴史的記録と呼ぶにふさわしい桁外れの額なのだ。

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マイクロソフトという大きな壁の前で消えてしまうかに見えたか弱いアップルが、ライバルコンピュータメーカーだけでなく、すべての IT 企業、すべてのアメリカ企業と比べてもそれをはるかに凌駕する存在になってしまった。

製造業など過去のもの、未来は金融工学の錬金術にあるとつい最近まで狂奔した経済が金融危機以降すべて呻吟する中で、唯一アップルだけがこの偉業を成し遂げたのだからすさまじいというほかない。

アップルの成功は少品種大量生産の典型だ。しかもその勢い止まるところを知らない。

まるでゴリアテの前のダビデのようにマイクロソフトにどうしても敵わなかったアップルが、気がつけば誰よりも大きい怪物のような存在になっている・・・

いったいアップルとは何なのか、なぜ成功したのかという分析は、アップルにとってのみならずアメリカ経済にとっても重大な関心事とならざるを得ない。

     *     *     *

しかし同時に気懸かりな点もここから始まる。

トップの座にあるものに対してはこれまでより厳しい視線が注がれる。

とくにアメリカではそうだ。マイクロソフトを独禁法違反事件が襲ったのもマイクロソフトが絶頂期にあるかに見えたときだった。

そこまでいかずとも、アップルの舵取りは今後大変むずかしくなると思われる。

製品戦略のちょっとした判断ミス、サプライチェーンで起きる問題などがこれまで以上にアップルに大きな影響を及ぼすことになるだろう。

NY タイムズのアップル批判記事もそういう背景から出てきたのではないか。

Steve Jobs というビジョナリーを失ってもなおこのような偉業を達成したのは驚くべきことだ。

Tim Cook の新しい指導体制のもと、アップルの動向には今後とも目が離せそうにない・・・

★ →[NY タイムズの批判記事:New York Times

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Update 2:中国側から見ると・・・》
Update:iPhone 経済》


[履歴書を持って Foxconn に殺到する応募者:photo

すばらしい報道・分析記事が NY タイムズに載っている。

製造拠点を海外に移した米国の問題点をアップルを例にしてまとめたものだ。

John Gruber がその一部を抜粋、引用している。

Daring Fireball: “Why Apple Products Are Manufactured in China” by John Gruber: 21 January 2012

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なぜアップル製品は中国で作られるのか?

Why Apple Products Are Manufactured in China

Charles Duhigg と Keith Bradsher によって書かれた NY タイムズの記事。よくリサーチされた素晴しい記事だ。アップルを例に引いて、なぜ中国が製造拠点として台頭してきたのか、米国中産階級の雇用にいかなる影響を与えたかをまとめている。初代 iPhone のディスプレイを土壇場でプラスチックからガラスに変えた知られざるエピソード(少なくとも自分にとっては)も含まれる。

Fascinating well-researched investigative report by Charles Duhigg and Keith Bradsher for the New York Times, on the rise of China as a manufacturing power and the corresponding effect on middle class jobs in the U.S., with Apple as the case study. Includes this heretofore unknown (to me, at least) story on the original iPhone’s last-minute change from a plastic to glass display:

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「キズがつくようなモノを売ろうとは思わない」

iPhone が 2007 年に店頭に並ぶひと月ほど前のこと、Jobs 氏はひと握りの副官たちをオフィスに招き入れた。この数週間、彼は iPhone のプロトタイプをポケットに入れて持ち歩いていたのだ。

In 2007, a little over a month before the iPhone was scheduled to appear in stores, Mr. Jobs beckoned a handful of lieutenants into an office. For weeks, he had been carrying a prototype of the device in his pocket.

Jobs 氏は怒りをあらわにして iPhone がみんなの目に見えるように差し出した。プラスチックスクリーンの表面には無数の小さな引っかきキズが見えた、とその場にいた人間のひとりは語る。それから彼はジーンズのポケットからキーを取り出した。

Mr. Jobs angrily held up his iPhone, angling it so everyone could see the dozens of tiny scratches marring its plastic screen, according to someone who attended the meeting. He then pulled his keys from his jeans.

この電話は誰もがポケットに入れて持ち運ぶようになるのだと彼はいった。ポケットにはキーも入っている。「キズがつくようなモノを売ろうとは思わない」とピリピリした声で彼はいった。唯一の解決策はキズのつかないガラスを使うことしかない。「ガラスのスクリーンにすべきだ。6週間でやれ!」

People will carry this phone in their pocket, he said. People also carry their keys in their pocket. “I won’t sell a product that gets scratched,” he said tensely. The only solution was using unscratchable glass instead. “I want a glass screen, and I want it perfect in six weeks.”

ひとりの幹部がその場を後にした。そして中国深圳へのフライトを予約した。完璧にしろと Jobs 氏がいうのなら、中国に向かうしかないのだ。

After one executive left that meeting, he booked a flight to Shenzhen, China. If Mr. Jobs wanted perfect, there was nowhere else to go.

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一夜にして 3000 人を雇える

NY タイムズは、元幹部および現幹部たち(後者はもちろん匿名希望)から同じような話を引用している。すなわち、中国は単に安価な製造拠点なのではないのだ、何より重要なのはより機敏で、より柔軟、より対応が早いという点なのだと。

The Times has quotes from former and present (unnamed in the latter case, of course) executives who all paint the same picture: that Chinese manufacturing isn’t merely cheaper, but also perhaps even more importantly, nimbler, more flexible, and faster:

「彼らなら一夜にして 3000 人を雇える」と2010 年までアップルの世界サプライマネージャだった Jennifer Rigoni は(仕事の細部については触れなかったが)語った。「米国の工場で一夜にして 3000 人を雇い、従業員を寮に泊めることを納得させられるそんな工場がアメリカのどこにあるだろうか?」

“They could hire 3,000 people overnight,” said Jennifer Rigoni, who was Apple’s worldwide supply demand manager until 2010, but declined to discuss specifics of her work. “What U.S. plant can find 3,000 people overnight and convince them to live in dorms?”

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Jobs の命を受けて直ちに中国に発つエピソードは前に読んだものと重なる。

Foxconn がガラスへの変更要求を受けて従業員を真夜中に叩き起こし、急遽生産ラインを変更、96時間後には大量生産にこぎ着ける下りもすさまじい。

大変長文だがエピソード満載の記事なので、ぜひとも全訳を読みたいところだ。

Mike Daisey の突撃取材のときはあまり注目されなかった。NY タイムズのこんな記事を読むとジャーナリズムはまだ健在なのだなあと思う。

未曾有の大惨事の後も何ら変わらないように見える原発政策だが、どこぞのジャーナリストにこんな記事をぜひとも書いてもらいたいものだ・・・

★ →[原文を見る:Original Text

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《Update》iPhone 経済(1月23日)


The iPhone Economy | NYTimes.com]

Steve Jobs の強烈なエピソードだけについ目がいってしまい勝ちだが、NY タイムズの記事は海外移転による国内製造業の技術と雇用の空洞化をあつかったものだ。

その意味で記事に添えられた上のビデオがよくまとまっている。

また、こちらのブログも参考になる。

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《Update 2》中国側から見ると・・・(1月24日)


[Foxconn の郭台铭会長:image

中国が世界の「タコ部屋」と思われないようにすることは中国にとっても喫緊の課題のようだ。

M.I.C. Gadget: “Foxconn CEO: Manage One Million Workers Gives Me A Headache That Kills” by Chris Chang: 19 January 2012[中国語

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100万人の労務管理は頭痛のタネ

Foxconn の郭台铭(Terry Gou)会長が工場設備のロボット化を口にして以来、いずれ同社の労働者は職を失う日がくるだろうと思った。Foxconn は組み立てラインの反復作業をやれるロボットを3年計画で増やして行く計画だが、同社の100万人の労務管理は頭痛のタネだと郭会長は語っている。

Ever since Foxconn CEO Terry Gou told people that the robots are coming, we think the Foxconn workers will go jobless someday. As Foxconn is going to boost the number of robots doing those repetitive tasks on its assembly line in 3 years time, the Foxconn chairman recently talked about the workforce of the company, saying that the management of one million workers gives him headaches.

Foxconn 会長郭台铭(Terry Gou)は「毎日100万人の工員を管理するのは死ぬほどの苦痛だ」と台北で行なわれた一周年記念式で述べた。

“每天管理100万员工,头痛得要死。”1月15日,在台北市一次年会活动上说。

“To manage one million workers every day gives me a headache that kills,” said Terry Gou at an activity in Taipei on Jan 15th.

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ロボット化の導入

そんな発言を聞くのは悲しいことだ。Foxconn は中国最大の民間部門で100万人を超える従業員を抱えている。しかし同社は、高騰する労賃および従業員の自殺に関する批判的報道からくる大きなプレシャーにさらされている。Foxconn の創業者にして会長の郭台铭は中国本土の工場で生じるあらゆる問題に対応しなければならない。労働者の自殺が注目を浴びているため、Foxconn としては労働環境の改善を図る必要があるが、それと同時に圧倒的人気のアップルデバイスに対する巨大な需要にも対応しなければならない。だから Foxconn がタコ部屋と呼ばれるのを避けるためには、同社の100万人の労働力の一部をロボット化するのが効果的な方策なのだ。それこそ郭会長が望んでいることなのだ。

It’s pretty sad to hear that. Foxconn is currently the largest private-sector employer in China with over one million employees, but the company is pressured by the stresses of rising labor costs and negative media attention over employee suicides. Being the founder and chairman of the company, Gou needs to solve any problems coming out from the factories in mainland China. As everyone is paying attention on the lives of Foxconn workers, Gou must take care the workers, but at the same time, being able to cope with the huge demand of Apple’s super-popular devices. So, the effective solution to stop people calling Foxconn as a sweatshop is to partially replace the company’s human workforce with one million robots, and here’s what Gou was hoping for,

「将来はより人間の知恵に近いプログラムをエンジニアがロボットの頭脳に組み込めることを希望している。人間でいえばほぼ18歳の知恵に匹敵するものを。」

未来,我们希望设计师能将更多的人间智慧写成程式,转化成机器人的头脑,使其智慧等同于18岁的人类。”郭台铭说。

“In the future, we hope designers are able to encode human intelligence into programs, converting the programs into robots’ software brains to match the intelligence of a 18-year-old human,”

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低賃金、低スキルの「タコ部屋」と見るだけでは、中国のすさまじいまでの変化を見落としてしまう恐れがある・・・

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