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[ロンドンの Design Museum で語る Jony Ive:Dezeen

Jony Ive にとってデザインとはモノを設計して作るという意味で「モノ作り」の哲学ともいえる。

その哲学の中心にあるのが「care」という考え方ではないかと思う。日本語にしにくいが「思いやり」とか「心づかい」いうことだろうか・・・

ロンドンの Design Museum におけるスピーチから「優れたデザインとは」の部分を取り上げる。

Design education is “tragic”, says Jonathan Ive | Dezeen

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カネを稼ぐことが目的ではない

「これまでずっとアップルの目的は決してカネを稼ぐことではないとハッキリいってきましたし、心底そう思っています。カネは私たちの目的ではないのです。カネを稼ぐことを原動力とする組織からはいいデザインは生まれないと私は思います。私たちの目標は必死になって可能なかぎり優れた製品を作ることです。私たちはナイーブではありません。もし優れた製品が作れればみんなが好きになってくれるだろう、そうすればみんなが買ってくれるだろうと信じています。確かに経営的にアップルはうまくいっていますし、自分たちのやっていることを心得ていますから、そうすればカネも稼げるだろうと分かっています。しかしそれはあくまで結果なのです。」

“We’ve tried very hard to be very clear, and this is absolutely sincere, that our goal at Apple isn’t to make money. That isn’t our goal. I think it’s much harder for good design to come out of an organisation and to come from that as a driving force. Our goal is to desperately try to make the best products we can. We’re not naive. We trust that if we’re successful and we make good products, that people will like them. And we trust that if people like them, they’ll buy them. Operationally we are effective and we know what we’re doing and so we will make money. It’s a consequence.

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経済合理性に欠けるかに見える意思決定

「とはいっても、言うは易しです。優れたデザインを生むのは実践です。それをやるべきであり、それを心から信じるべきなのです。経済的合理性に欠けるように見える意思決定も沢山あるかもしれません。だからこそいまお話した動機づけ[注]が大切になるのです。私たちの作ったものを見ると本来意図したものより高価になっているかもしれません。本来正しかるべきもの以上にかかった余分のコストを正当化することはできません。しかしよりよいものにはなっているのです。ちゃんとした整合性があるのです。その違いは分かって欲しいと思うでしょう。」
[注]「結局なぜそれを作るかという動機と意味付けに立ち戻るのです」を参照

“Those are very easy words to say. The practice is what I think makes good design. That’s what you really do and you really believe. There are many decisions that we make that might not appear to make fiscal sense, which is why the motivation that I’ve just described is so important. You can look at something we’ve done and it costs a lot more to make it the way that we want to make it. I can’t justify that extraordinary additional amount of money to make it other than it’s the right thing to do. It’s made it better. There’s integrity there. You hope that people can tell the difference.

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思いやり(care)

「ほんとに心から信じるのですが、ひとびとは思いやり(care)を感じることができると思います。同じように思いやりの欠如(carelessness)も感じることができるのです。これはお互いが相手に対して抱く敬意のことです。まったく思いやりに欠けたものを私に買わせるとしたら、それは私個人に対する侮辱だと受け取るでしょう。文化的文脈でもこれは侮辱的です。なぜなら同胞を軽視することになるからです。私たちが常に正しいといっているのではありません。少なくとも私たちは心から思いやろうと意図しているということなのです。私たちにとってよいデザインとは決意と動機づけからスタートします。思いやりの欠如からは決して優れたものは生まれないと思います。しかし悲しいことに私たちを取りまく物質世界は思いやりの欠けたことを示す工業製品で溢れています。ひとつだけいいことがあるとすれば、もし私たちが心から思いやろうすればはっきりとそれが目に見えるということです。」

“I really, truly believe that people can sense care. In the same way that they can sense carelessness. I think this is about respect that we have for each other. If you expect me to buy something where all I can sense is carelessness, actually I think that is personally offensive. It’s offensive culturally, because it shows a disregard for our fellow human. I’m not saying that we get it right all the time, but at least our intent is to really, really care. Good design for me starts with that determination and motivation and I don’t think there’s anything, ever, that’s good that’s come from carelessness. The sad thing is that so much of what we’re surrounded by in the physical world that is a product of manufacture, so much of it testifies to carelessness. The one good thing about that is if you do care it is really conspicuous.”

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デザイナーの責任

「毎日長時間使うことになる製品の場合、私たちと私たちがいちばん思いやるひとびとの間に生じる信じられないほどの親密さという点で、どんな材質を使うか、どのように作るかということに出来るかぎりの心づかいをする必要があるということだと思います。ですから、現実から目を背けるのではなく、デザイナーとしての責任をちゃんと認識することが大切だというのが私の考えです。」

“For those products that we are going to use for so many hours every day and are at that point of interface where there is incredible intimacy between us and other people that we care about the most, I think what it means is that we need to invest as much care as we can in how we develop them, as much care as possible in the materials we use, as much as in how we make them. So my interpretation is not that we run away and bury our heads in the sand, but we actually acknowledge that our responsibility as designers is important.

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自分の中には確とした考えがあるのに、それを口に出そうとするとハッキリいえずにもどかしい・・・Jony Ive の語りからはそんな感じさえ受ける。

「care」(思いやり、心づかい)についてもそんなもどかしさを感じているのではないか・・・

Jony Ive の伝記の書評が話題になっている。

どこに視点をおくかでまったく異なった評価になる。評価するひとの問題意識の違いにもよるのだろうが、本人以外の第三者が書く著作物が避けて通れないものなのかもしれない。

その意味で本人が語る言葉こそいちばん重みがあるのではないか。伝記にしろ、哲学にしろ、本人のことばに遡って検討する必要があるのではないか。

Ive の雄弁さに気づかされたのは、彼がスティーブ・ジョブズへの弔辞を読んだときだった。

これまでジョブズの陰に隠れていた彼だったが、思ったより雄弁という印象を受けた。しかも抑えの利いた英国ユーモアに富んでいる・・・

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そんな目で改めて Jony Ive を見ると、欠かせないインタビューが3つあると思う。

まずひとつ目は、Charlie Rose のインタビューだ。

のびのび語る Jony Ive:Charlie Rose の長時間インタビュー | maclalala2

インタビューの名手 Charlie Rose の番組に登場したのは Tim Cook より早かった。とくに盟友 Marc Newson と一緒のせいか実にのびのびと語るのが印象的だ。

2つ目は、公開の場における Vanity Fair のインタビューだ。

Vanity Fair の Jony Ive インタビュー | maclalala2

異例の公開の場にも関わらずここでも控え目だが雄弁に語る Ive がいる。とくに会場からの質問に答える場面が貴重だ。

3つ目が、ロンドンの Design Museum でのインタビューだ。

Ive のデザイン哲学、ひいてはアップルのデザイン哲学が凝縮されていて大変貴重だが、ごく一部の断片を除いてインタビュービデオそのものは未だ公開されていない。

その詳細は Dezeen がまとめているので、これまでも何度かその一部を取り上げてきた。

今回取り上げたのは「優れたデザインとは」に関する部分。

「ひとびとは思いやり(care)を感じることができると思います。同じように思いやりの欠如(carelessness)も感じることができるのです」という彼のことばは、「人間の有り様(よう)のひとつは、心づかいができるということです」という Charlie Rose のインタビューとも響き合うことに気づく。

Ive のことは彼自身に自分のことばで自由にしゃべらせるのが一番いいのではないかと思う・・・

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