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Posts Tagged ‘Apple University’

Update:人間性を掘り下げられたか》


Steve Jobs by Walter Isaacson

ベッドで、部屋を暗くして目を休ませたおかげで、眼底の激痛はだいぶ楽になってきた。

この際聴きそびれていたポッドキャストを iPhone でまとめて聴いた。

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唯一の公認伝記本『スティーブ・ジョブズ』はなかなか読み通せない。

初代 Macintosh 以来追い求めてきた Jobs 像と、自分の中でなかなか折り合いがつかないのだ。

あちこちつまみ食いした挙げ句、気がついたらページを繰る手が止まっていた。

そんな自分の気持ちがなんとなくしっくりしたのがジョン・シラキューサ(John Siracusa)のポッドキャストだった。

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作者の人選を誤った

アップされたときから、強烈な批判らしいということは知っていた。

しかし、Walter Isaacson の伝記本を読み終わるまではお預けにしておこうと思っていた。

ウワサどおりの激しさだ。

5by5: “Hypercritical #42: The Wrong Guy” by John Siracusa and Dan Benjamin: 11 November 2011

Isaacson の伝記本を徹頭徹尾批判する。

最大の理由は伝記本作者の人選を誤ったという点だ。

失われたインタビュー「Triumph of the Nerds」の中で、自分がスカウトして、その結果アップルを追われることとなったた John Sculley について Jobs は次のように語る

Steve Jobs:いうことないよ。間違ったヤツを雇ってしまったんだ。

Steve Jobs: Ehm what can I say? I hired the wrong guy.

John Siracusa は Isaacson 伝記本についてこう切って捨てる。

「いうことないよ。間違ったヤツを作者に選んでしまったのだ。」

“What can I say? He picked the wrong guy to write a bio.”

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The Wrong Guy

なぜ「the wrong guy」(この仕事に不向きな人間、間違ったヤツ)なのか?

最大の理由は、Isaacson が Steve Jobs の成し遂げた分野ついてシロウトだという点だ。

シロウトなだけでなく、知ろうとする意欲もないと批判する。

秘密主義の Jobs が、生涯にたった一度、何でも聞いてくれと与えた唯一無二、稀有のチャンスを生かすことが出来なかったと Siracusa は切歯扼腕する。

その結果出来上がったものは、

「タイムやニューズウィークの記事をまとめただけみたいな代物」
「伝記作品(literature)とはとても呼べない」
「人間的側面に興味をおきすぎ、People マガジン的」
「折角の貴重な機会を生かせずにイエスマン的に聞いただけ」

止めの一撃は「浅薄さ/怠惰さ」(shallowness/laziness)だろう。

烈火の如く怒るシラキューサ(Siracusa on fire)が鉄砲のように打ち出すしゃべくりは、1時間かけても収まらず、さらに翌週に2時間弱かけて思いの丈をしゃべり尽くす。

具体的論点とその激しさについては是非とも自分の耳でお確かめあれ!

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もうひとりのギーク John Gruber の評はこうだ。

Daring Fireball: “Hypercritical, Episode 42: The Wrong Guy” by John Gruber: 15 November 2011

シラキューサのポッドキャスト

Walter Isaacson の『Steve Jobs』を読了して、全体的にガッカリしたが、それがなぜなのか十分に時間をかけてまとめるには至っていなかった。しかし John Siracusa はそれをやってのけた。この伝記本をあらゆる点から徹底的にやっつける様は実に衝撃的ですらある。このポッドキャストを聞くにあたり、伝記本には欠陥があること、Siracusa もそのことを知っていること、ポッドキャストの最初から終わりまで彼のいうことに納得するだろうと思っていた。でもそれだけではなかった。Isaacson はフイにしたのだ。一回限りのチャンスを永遠に逃してしまった。Jobs は間違ったヤツを選んでしまった。

After finishing Walter Isaacson’s Steve Jobs, I was disappointed overall, but didn’t take the time to completely formulate why. John Siracusa did, though, and his multi-faceted critique of the book is simply devastating. I went into this podcast knowing that I thought the book was flawed, knowing that Siracusa did too, and expecting to be nodding my head in agreement with him throughout the show. But it’s worse than that. Isaacson blew it, a one-time opportunity forever squandered. Jobs picked the wrong guy.

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プライバシーと秘密主義

Isaacson 本に関する Gruber 自身のポッドキャストもオモシロい。

5by5: “The Talk Show #67: Half-n-Half” by John Gruber and Dan Benjamin: 16 November 2011

きちんとしたことが書けるとしたら誰だったろうかという問いに Steven Levy の名前が挙がったのが興味深かった。

しかし Isaacson を選んだ背景には Jobs の隠された意図があるのではないかという視点がおもしろい。

コンピュータ業界の事情に通じていないが故に、また詳しく突っ込もうとする熱意がないが故に Isaacson は伝記作者として選ばれたのだ、と。

Jobs の秘密には二つの側面がある。プライバシーと秘密主義だ。プライバシーは人間 Jobs のプライベートな側面、秘密主義は会社としてのアップルが死守する企業秘密だ。

企業秘密の側面については、エール大学のビジネススクールの学部長 Joel Podolny を引き抜き、アップル幹部育成用の「アップル大学」のためのケーススタディを作らせた。アップル発展の企業秘密はすでにそういう形で蓄積、継承されている。それを一般書の形で Isaacson に書かせる必要はなかったというわけ。

それより、死後あれこれ取り沙汰されるであろうプライバシーの部分を Jobs が提供する情報をベースに書かせておきたかったのではないか、と。

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Jobs やアップルについて疎い一般読者の立場ではなく、ギーク(ナード)の立場からの批評だが、Isaacson 本の限界について考えさせられる点が多いように思う。

目が見えなくなったおかげで、たっぷり時間をかけて聴くことができてよかった。

読み残しの部分を改めて読んでみようという気になった・・・

★ →[ポッドキャストを聴く:John Siracusa
★ →[ポッドキャストを聴く:John Gruber

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《Update》人間性を掘り下げられたか(12月4日)

アップルの成功秘話だけでなく、Steve Jobs の人間性を掘り下げることに成功したのだろうか・・・

tumblqbrady: “Steve Jobs by Walter Isaacson: a review” by Thomas Q. Brady: 02 December 2011

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ジコチューのコントロール・フリーク

「問題を分析する」というとき、心理分析の話をしているのではない。そんな例ならこの本にはいくらでもある。Isaacson は、Jobs が生みの親に養子に出されたときの苦しみを克服できなかったと好んで指摘しているように思える。Isaacson がいろいろな原資料から「Psychology Today」誌的な安手のシロウト分析で描き出したのは、「ジコチューで未熟、情緒不安定なコントロール・フリーク」(a self-absorbed, immature, emotionally unstable control-freak)だった。

When I say “analysis,” I’m not talking about psychology. There’s plenty of that. Isaacson seems to enjoy pointing out that Jobs never really overcame the pain of knowing that his parents gave him up for adoption. But all Isaacson’s armchair, Psychology Today thinking rendered from the source materials was a self-absorbed, immature, emotionally unstable control-freak.

これがいかに恥ずべきものか、2つ理由を挙げられる。

There are two reasons that’s a complete shame.

1)Steve Jobs についてみんな知っていることだ。

1. We already knew that about Steve Jobs.

2)そんな人間ならゴマンといることを知っている。米国ではこの(数)十年来、そんな人間を増殖させてきた。しかしそんな人間の中で、ガレージから会社を立ち上げ、世界で最も価値のある会社に育て上げたものは誰もいないことも知っている。

2. I know lots of people that could be described that way (we seem to have been breeding them in the US over the last couple (few?) decades), and none of them started a company in their garage that became one of the most valued corporations in the world.

何が Jobs を他者とは異なる存在にしているのか? その答えはちゃんと出されていないのだ。

What made Jobs different? This isn’t really answered.

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Jobs をエクセントリックな人間として描くことが本書の目的ではなかったハズ・・・

[via Daring Fireball

★ →[原文を見る:Original Text

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“Inside Apple” の Kindle 版

Fortune の『アップルの内幕』(Inside Apple)は、iPad 版(4.99 ドル)のほかにアマゾン版(99 セント)も出て、ハードカバーを差し置いて堂々トップテンにはいったそうだ。

ウェブ版が出ないのでなかなか全文を読めないが、特に興味深い「アップル大学」(Apple University)の部分はどうやら次のようなものらしい。

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アップル大学

「アップル大学」は、Steve Jobs の依頼によってイェール経営大学院の元学部長 Joel Podolny が立ち上げたプロジェクトだという。

Coursekit Blog: “Apple University” by Joseph Cohen: 10 May 2011

「Jobs 亡き後のアップルという非常にデリケートな問題に直接関係するプロジェクトを進めることで Podolny は多忙だったという。Jobs の指示に従い Podolny は経営学の教授をひとチーム雇った。ハーバードの有名教授や、Andy Grove の伝記を書いた Richard Tedlow なども含まれる。この一群のインテリたちが、アップルの最近の重要な意思決定について社内用のケーススタディを次々にまとめた。主なビジネスクスールで行なわれるケーススタディとまったく同じタイプのものだ。ただし利用するのがアップルの社員に限られるという点が異なっていた。次世代の管理者層に対しトップ経営陣の思考過程を明らかにすることがその目的だった。アップルの次世代リーダーたちが後に調べ、解釈できるように、Jobs の教えが集められ、蒐集され、保存されたのだ。

“It turns out Podolny has been busy working on a project that speaks directly to the delicate topic of life at Apple after Jobs. At Jobs’ instruction, Podolny hired a team of business professors, including the renowned Harvard veteran and Andy Grove biographer Richard Tedlow. This band of eggheads is writing a series of internal case studies about significant decisions in Apple’s recent history. It’s exactly the sort of thing the major business schools do, except Apple’s case studies are for an Apple-only audience… The goal is to expose the next layer of management to the executive team’s thought process… Jobs is ensuring that his teachings are being collected, curated and preserved so that future generations of Apple’s leaders can consult and interpret them.”

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アップル大学については多くのひとが関心を持ったようだ。なかでも asymco の Horace Dediu が興味深いコメントをしている。

asymco: “Codifying asymmetry: How Apple became Jobsian” by Horace Dediu: 08 May 2011

アップル大学のミステリー

この理由[アップルの意思決定過程はウワサ話や逸話程度で、きちんとまとめられた形になっていない]から、Fortune の「Apple University」のミステリーに関する部分が私の目を引いた。

For this reason, a recent quote about the mysterious “Apple University” in Fortune caught my eye.

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イェール大の学部長を引き抜く

Apple University が初めて口の端に上ったのは、イェール大学マネジメントスクールの Joel Podolny がアップルに雇われ、新しい「大学」の設立に関わることになったときだ。当時それって何だろうと考えたのを覚えている。最高のビジネススクールのトップの仕事をやめてアップルに加わるからには強力なインセンティブがあったに違いない。アップルが野心的な iTunes プロジェクトとして、同サイトから教育プログラムないしは教材を提供するのだろうと想像したものだ。

Apple University was first mentioned in 2008 when Joel Podolny was hired from running Yale Management School to join Apple in creating this new “University”. I remember at the time thinking what such a thing might be. To leave the top job in one of the top business schools to join Apple must require some powerful incentives. I envisioned Apple entering into a far more ambitious iTunes project where they could be offering degree programs or teaching resources through the familiar store front.

しかし Apple University について耳にしたのはそれが最後だった・・・少なくとも昨日までは。

But nothing was heard about Apple University again. Until yesterday.

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社員教育のカリキュラム

Fortune その他の情報を踏まえると、Joel Podolny はアップルの経営がどんなものであるか理解しようと努めていたのだ。そして理解したことをカリキュラムという形に組んで、アップルの社員教育に使えるようにすることを頼まれたのだ。

According to the article in Fortune and some additional details from another source, Joel Podolny has been building an understanding of how Apple is run. He’s then been asked to codify this understanding into a curriculum that can be taught to Apple employees.

アップル組織のプロセスと知識をまとめようとしていると考えると実に興味をそそられる。自らをよく知る会社はほとんどない。それをカリキュラムに組んで次世代のリーダーたちに教えようとする会社はさらに少ない。(ディズニー、マクドナルド、トヨタも社内教育プログラムをもっているが、それは大部分新入社員向けのものだ。)

The idea that Apple is trying to capture its institutional processes and knowledge is very compelling. Few companies have self-knowledge. Fewer still try to codify it and teach it to new generations of leaders (Disney, McDonalds and Toyota have in-house training programs but they are mostly aimed at new hires).

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過去は忘れる

意思決定に関する知識は意思決定者が変わると消えてしまう。新しい世代は成功ないしは失敗の原因をまた最初から考えるハメになるのだ。

[…] Knowledge about decisions disappears once the decision maker moves on, leaving a new generation to figure out the causes of success (and failure) all over again.

過去は忘れるものだということはソニーやマイクロソフトなどいくらでも例が挙げられる。ソニーもマイクロソフトもいまやかつてとは正反対のことをしているようだ。ソニーはかつては次々と波乱を引き起こしてきたが、いまや伝統維持に汲々としている。マイクロソフトはかつてはソフトウェアビジネスを開拓したが、それに代わるビジネスモデルを見つけ得ないでいる。

The evidence of the forgetting of history abounds at companies like Sony and Microsoft which seem to be behaving exactly opposite to how they once did. Sony, once a serial disruptor, turned into a sustainer. Microsoft who pioneered software as a business, cannot find new business models for software.

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伝説的なアップル

アップルの意思決定とその成果は伝説的だ。彼らが「一般常識」に反した行為を取ったことは有名だ。ビジネススクールで得られるハズの知識はアップルの原則とは常に矛盾した。

Apple’s decisions and outcomes are the stuff of legend. They famously act asymmetrically to what is “conventional wisdom”. Wisdom imparted supposedly through business schools but systematically contradicted by Apple’s principles:

・コントロールされなくても説明責任を負うこと
・トップマネジメントはまず収益をあげるべきこと
・ベターなことでもイエスといわないこと
・明確でないマーケットに対しても製品を出すこと
・ヒエラルヒーないしは分割的組織ではなく機能中心の組織
・うわべだけのコンセンサスは無視すること

– Accountability without control
– Lack of “P&L responsibility” for top management
– Saying no to “better things”
– Building products before markets are identified
– Functional vs. hierarchical or divisional organzation
– A disregard for polite consensus

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アップル流のやり方を教育する

このような意思決定過程がきちんとまとめられていなければ、一般常識が優先されるようになったときどうしてそれが維持できるだろうか?

So if this type of decision process is not codified, how is it going to persevere when convention dictates otherwise?

記事の内容が正確であれば、「アップル流のやり方」をまとめ、次世代に教えるという努力が進行中だということになる。そしてジョブズ的なものがますます強化されることになるのだ。

If the article is correct and there is an effort under way to codify and teach new generations “the Apple way” then the case for Apple being Jobsian grows a lot stronger.

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iPhone や iPad などのアップル製品だけでなく、アップルという会社そのものがまさに Steve Jobs の創造物なのだ。「かつて彼が作り上げた Pixar のように、カリスマ的リーダーがいなくなった後も毎年毎年、次から次へとヒット作品を生み出すような会社にアップルを仕上げたことだ。

たとい Jobs がいなくなっても「ジョブズ的なもの」(Jobsian)は残そうということか・・・

★ →[原文を見る:Original Text

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[参考]

・Coursekit Blog: “Apple University” by Joseph Cohen: 11 May 2011

・asymco: “Codifying asymmetry: How Apple became Jobsian” by Horace Dediu: 08 May 2011

・guardian.co.uk: “Life inside Apple: Fortune article reveals anger, management and ‘top 100’ club” by Charles Arthur: 09 May 2011

・paidContent: “The Bestsellers: Fortune Article ‘Inside Apple’ Beats Out Full-Length Books” by Laura Hazard Owen: 14 May 2011

・WIRED VISION: “Apple社員が明かす「Jobsマジック」の秘密” by Brian X. Chen: 11 May 2011

・WIRED VISION: “米Apple社、「大学」を開校へ:イェール大学学部長が統括責任者” by Chris Snyder: 24 October 2008

・maclalala2: “John Gruber、アップルを斬る“: 14 February 2010

John Gruber at Macworld 2010 | YouTube

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