《Update:強力になり過ぎて手に負えなくなったデザイナー》
[Tim Cook と Jony Ive:photo]
Business Insider: “Paul Kedrosky On What Has Gone Wrong At Apple” by Henry Blodget: 02 February 2013
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アップルで何が起きているのか
アップル内部でいったい何が起きているのか、アップルの秘密主義もあって正しく理解するのは難しい。
Given Apple’s commitment to secrecy, it’s hard to get a good sense of what is going on inside the company.
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最近の失敗を見れば分かる
一目置かれた観察者である Paul Kedrosky[注:ブルームバーグテレビの常連]の意見によれば、アップルの最近の失敗を見れば何が起きているのか分かるという。
But in the opinion of one respected industry observer, Paul Kedrosky, some of Apple’s recent missteps can tell us a lot about that.
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競争上の優位性が消滅しつつある
昨日の Bloomberg West のインタビューに答えて Kedrosky は、新しい iMac に対する需要をアップルが充たせなかったこと(第4四半期のマック売上げが不調だった原因のひとつ)、さらには iPhone 部品発注の取り消しが相次いだことは、アップルがライバルに対して持っていた競争上の優位性が消滅しつつあることを示すものだという。
In an interview with Bloomberg West yesterday, Kedrosky said Apple’s inability to meet demand for its new iMacs–a problem that contributed to disappointing Mac sales in Q4–as well as its cancellation of many iPhone component orders, mean that one of Apple’s key competitive advantages may be disappearing.
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パワーバランスの変化が原因だ
iMac の問題はアップル内部のパワーバランスに重要な変化が起きていることを示していると Kedrosky は考えている。
Kedrosky believes that Apple’s iMac problems reveal an important change in the power balance within the company.
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Jony Ive の力が大きくなり過ぎた
とくに Kedrosky は次のように考える。スティーブ・ジョブズの死後生じた権力の空白において、Jony Ive 率いるデザインチームに与えられた裁量権限が大きくなり過ぎ、その結果アップルはスムーズかつ早急には作れないようなデザインの製品で需要を充たそうとするようになったと。
Specifically, Kedrosky thinks that, in the power-vacuum following Steve Jobs’ death, the design team, led by Jony Ive, have been given too much latitude–such that Apple is now designing products that it is not capable of manufacturing as smoothly and quickly as it needs to to meet demand.
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ジョブズが亡くなったせいだ
ジョブズが生きていた間は、デザインチームと製造チームの間の「緊張関係」はうまく均衡がとれていた。プロダクトデザイナーおよび経営トップとしてのジョブズの優れた才能によって、製品の「デザイン偏重」、あるいは逆にデザインの劣化をもたらす数字尊重をアップルは避けることができた。このバランスがあったからこそアップルはデザインにおいても製造においてもライバルを凌駕することができたのだと Kedrosky は考える。
When Jobs was alive, Kedrosky implies, this “tension” between the design teams and manufacturing teams was in almost perfect balance. Jobs’s brilliance as both a product designer and business executive kept the company from “over-designing” its products, or, just as bad, focusing so much on the numbers that its design standards sagged. And this balance, Kedrosky suggests, allowed Apple to continually out-design and out-produce the competition.
しかし今やジョブズは亡く、Jony Ive のデザインチームは強力になり過ぎ、Ive のデザインした製品が、一定期間内に本当に大量生産できるかどうかという決定的チェックが行なえなくなった。
But now that Jobs is gone, Kedrosky suggests, Jony Ive’s design team has been given too much power–without a critical on whether Ive’s products can actually be produced in the quantity and timeframe that Apple needs to produce them to meet demand.
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Ive に余りに多くを委ね過ぎた
もし Kedrosky のいうことが正しければ、後継者としてジョブズが選んだ Tim Cook の力量は製造分野に限られ、デザイン面には及ばなかったことになる。Kedrosky が正しければ、アップルの CEO は Ive に多くを委ね過ぎ、自らの判断すら委ねてしまったのかもしれない。
If Kedrosky is right, the irony is that the expertise of the man Jobs selected to succeed him–Tim Cook–is actually on the manufacturing side, not the design side. So, for Kedrosky to be right, Apple’s CEO would have to be deferring too much to Ive, perhaps over his own best judgement.
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アップルは何かがおかしくなっている
ともあれ、アップルでは何かがおかしくなっていることは確かだ。それが何か Kedrosky はひとつの興味深い考えを示している。
In any case, something has clearly gone wrong at Apple. And this is an interesting theory about what that is.
本記事の元になっている Bloomberg West の Kedrosky インタビューはこちら。
Here’s Kedrosky with Emily Chang of Bloomberg West:
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アップルもここまでいわれるようになったのかという思いがする。
アップル批判の根拠は、
・新しい iMac の出荷が遅れている
・iPhone 部品発注の取り消しが相次いだ
という点だ。
その妥当性については読者の判断に委ねたい・・・
★ →[原文を見る:Original Text]
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《Update》強力になり過ぎて手に負えなくなったデザイナー(2月10日)
いささかショックだった。
アップルバッシングの一例として根も葉もないウワサを取り上げたつもりが、そのまままかり通ってしまいそうな気配・・・
Henry Blodget の上記記事については John Gruber の「根も葉もない与太話発生のメカニズム論」がポイントを衝いている。
Daring Fireball: “Designers Running Amok” by John Gruber: 04 February 2013
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Jony Ive が強力になり過ぎただと?
Henry Blodget がいうには:
Henry Blodget:
「とくに Kedrosky は次のように考える。スティーブ・ジョブズの死後生じた権力の空白において、Jony Ive 率いるデザインチームに与えられた裁量権限が大きくなり過ぎ、その結果アップルはスムーズかつ早急には作れないようなデザインの製品で需要を充たそうとするようになったと。」
Specifically, Kedrosky thinks that, in the power-vacuum following Steve Jobs’ death, the design team, led by Jony Ive, have been given too much latitude — such that Apple is now designing products that it is not capable of manufacturing as smoothly and quickly as it needs to to meet demand.
確かに。スティーブ・ジョブズが実権を握っていた時代には、需要に応じられないことなんて起きなかったように見える。iPhone 4 白モデルだってきちんと予定どおり登場したじゃないか。
[注:John Gruber のジョーク。実際は需要に応じきれない出荷遅れもあったし、iPhone 4 白モデルの登場にはずいぶんと時間がかかった。]
Yeah, it’s not like Apple ever had problems meeting demand with new products when Steve Jobs was in charge. The white iPhone 4 came out right on schedule.
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根も葉もない与太話発生のメカニズム
追記:少し真面目に検討してみよう。Blodget の記事の最終行が問題なのだ。
UPDATE: Let’s get serious for a second. Here’s the final paragraph from Blodget:
「ともあれ、アップルでは何かがおかしくなっていることは確かだ。それが何か Kedrosky はひとつの興味深い考えを示している。」
In any case, something has clearly gone wrong at Apple. And this is an interesting theory about what that is.
アップルをめぐる与太話(jackassery)がどうして発生するのかうまく総括しているではないか。まずアップルは何かがおかしいという「真実らしきもの」から始める。それからそれが何なのかをあれこれ推測して見せるのだ。アップルにはこれまでもいろいろ大きな問題があったし、完璧ではなく、数多くの容易ならざるライバルにも囲まれている。しかしそれは他のどの会社も大きな問題を抱え、決して完璧ではなく、容易ならざるライバルに囲まれているのと同じなのだ。上の最終行が間違っているのは、この1〜2年でアップルが何か「おかしくなった」と考えている点だ。事実は、過去10年の間アップルは(その点に関しては)まったく変わらず同じ状態だったのだ。
That pretty much summarizes what’s driving the current wave of Apple jackassery: start with the “fact” that something has gone wrong with Apple, then speculate about just what that is. Apple has real problems, isn’t perfect, and faces numerous serious competitors — but it, like every company, has always had problems, has never been perfect, and has faced serious competitors. The error in this line of thinking is that something has “gone wrong” for Apple in the last year or two. The truth is, most things have gone exactly right for Apple for the last 10 years.
何かがおかしくなったことは確かだ。しかしそれはアップルに対する認識であって、アップル自体ではない。
Something has clearly gone wrong, but it’s with the perception of Apple, not with Apple itself.
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Paul Kedrosky の「与太話」の根拠となっている2つの「事実」から「Jony Ive の暴走」という結論を導くには飛躍があり過ぎる。
Horace Dediu の分析も強力な反論のひとつだ。
しかしアップルがおかしいと「思いたい」ひとにとっては、そんな説明はどうでもいい。
「アップル新製品に対する需要が落ち込んだ」でも、「Ive が暴走して手に負えなくなった」でも、どんなに短絡したものでもいいのだ。
最近のアップルをめぐる環境は非常にナーバスになっており、どんなウワサでもまかり通りそうな気配だ。
ジョブズが亡くなったからもうアップルはダメだと考えたいひとにとって、何をどう反論しようとも所詮アップル信者の戯言(たわごと)にしか聞こえないのだろう・・・
最近のAppleからは何も魅力を感じない。
内部で何が起きているとかも興味がない。
iOS 6でMapをあのようにしたのに、未だに解決できていない。これが全てだ。これほど緊張感をなくしたのかと思う。鬼軍曹がいない幼稚園のようだ。
部品発注の取り消しの件は日本初の情報が多いようですが、そもそもクリスマスシーズン以降の需要の変化を無視した記事だったような気がしました。
いつの間に既成事実になったんでしょう?
それにうまく作れないというのはいつものappleじゃないですかね?
Airの最初もそうだったと思いましたが。他にも例があったような気がするので別に騒ぐような事でもないのでは。どうもJobsがいない事でネガティブにしたがるマスコミが多いような。
確かに以前のような魅力はアップルから感じられない。じゃあ、魅力がないかと言うと、そうではなくて、iphone5のフォルムは美しいと思うし、実に魅力的。imacも同じ。でもソフトウェアからは以前あったような今後、こんなに便利になっていくんだというような夢のようなものが感じられなくなっている。人事もあり単にソフトウェアの発表が最近ないだけだと思うようにしている。きっと次期OSXの発表では新しいわくわくを提供してくれるはずだと。
追記で私の言いたい事をコメントいただけたようです。
そう、「Jobsがいなくなったからappleがおかしくなった」なんて陳腐なストーリーを作りたい人がたくさんいるんだと思いますよ。いまのappleにとっては「うまくいかない事」がニュースなんでしょう。これだけの決算結果で文句言われる会社も珍しいですよ。というより文句付ける方がどうかしてます。
Jobsがいたから全てうまくいったなら、G4-CubeやOS-Xの種々の方針変更はなかった事になるんでしょうし(笑。
JonyのTAMはSteveに窓から投げ捨てられた訳で、危惧する気持ちはわからないでもないですね。
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最近のAppleは洗練されたデザインと不必要な薄さの追求しか感じられない。
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[…] アップルは何かがおかしい(via maclalala2) [image: jonyivetimcook] [Tim Cook と Jony Ive:photo] […]