[自宅前を飾る弔意の品々:photo]
Steve Jobs の晩年について NY タイムズが書いている
NYTimes.com: “With Time Running Short, Steve Jobs Managed His Farewells” by Charles Duhigg: 06 October 2011
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最後の別れ
何年もガンと戦ってきた Steven P. Jobs は残された時間がなくなってきたことを2月に知った。限られた知り合いに彼は伝えた。彼らは次々に他のひとに囁いた。そうして(Jobs 宅への)巡礼が始まった。
In February, Steven P. Jobs had learned that, after years of fighting cancer, his time was becoming shorter. He quietly told a few acquaintances, and they, in turn, whispered to others. And so a pilgrimage began.
訪問はボツボツと始まった。限られたひと、十人ほど、そして最後の週にはとぎれることなく人々がやってきて短い別れを請うたと Jobs 氏に近しいひとはいう。ほとんどのひとは Laurene 夫人に遮られた。申し訳ありませんが弱っていてお会いできませんと申し訳なさそうに彼女は断った。最後の週にはもう自宅の階段を昇れないのだと打ち明けられたひともいた。
The calls trickled in at first. Just a few, then dozens, and in recent weeks, a nearly endless stream of people who wanted a few moments to say goodbye, according to people close to Mr. Jobs. Most were intercepted by his wife, Laurene. She would apologetically explain that he was too tired to receive many visitors. In his final weeks, he became so weak that it was hard for him to walk up the stairs of his own home anymore, she confided to one caller.
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友人や家族と
Jobs 氏は最後の数週間を、それまでの生き様と同じく自ら決めたやり方で過ごした。親しい友人の医師で予防安全衛生師[preventive health advocate]の Dean Ornish を、パロアルトのお気に入りの寿司レストラン Jin Sho に招待した。昔からの同僚に別れを告げた。ベンチャーキャピタリスト John Doerr、アップル取締役会 Bill Campbell、ディズニー CEO Robert A. Iger など。アップルの幹部たちに火曜日発表の iPhone 4S についてアドバイスもした。伝記作者 Walter Isaacson とも話をした。新しい投薬計画が始まり、まだ望みはあると数人に語った。
Mr. Jobs spent his final weeks — as he had spent most of his life — in tight control of his choices. He invited a close friend, the physician Dean Ornish, a preventive health advocate, to join him for sushi at one of his favorite restaurants, Jin Sho in Palo Alto. He said goodbye to longtime colleagues including the venture capitalist John Doerr, the Apple board member Bill Campbell and the Disney chief executive Robert A. Iger. He offered Apple’s executives advice on unveiling the iPhone 4S, which occurred on Tuesday. He spoke to his biographer, Walter Isaacson. He started a new drug regime, and told some friends that there was reason for hope.
しかしほとんどの時間は妻や子供たちと過ごした。彼らは約 65 億ドルの財産を監督することになり、悲しみに加えて、ひとであると同時に象徴的シンボルでもあった者の遺産を守る責任を負うことになるのだ。
But, mostly, he spent time with his wife and children — who will now oversee a fortune of at least $6.5 billion, and, in addition to their grief, take on responsibility for tending to the legacy of someone who was as much a symbol as a man.
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何万倍もよかった
「Steve は自分でやり方を決める(Steve made choices)」と Ornish 医師はいう。「子供がいてよかったかと一度尋ねたことがある。『私が成し遂げたことの何万倍もよかった』と彼は答えた。」
“Steve made choices,” Dr. Ornish said. “I once asked him if he was glad that he had kids, and he said, ‘It’s 10,000 times better than anything I’ve ever done.’ ”
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自分の決めたやり方で
「しかし Steve にとっては、自分で大切と思えないことに一瞬たりとムダにしないで、自分のやり方で(on his own terms)生きるのが彼のやり方だった。この世の時間が限られていることを彼は知っていた。残された時間で為すべきことを自らコントロールしたいと望んだのだ。」
“But for Steve, it was all about living life on his own terms and not wasting a moment with things he didn’t think were important. He was aware that his time on earth was limited. He wanted control of what he did with the choices that were left.”
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自宅の回りには
最後の数か月、Jobs 氏の自宅(住宅地にある大きくて快適だが比較的質素なレンガ造りの家)はセキュリティーガードに囲まれていた。門の入り口には黒塗りの2台の SUV が止まっていた。
In his final months, Mr. Jobs’s home — a large and comfortable but relatively modest brick house in a residential neighborhood — was surrounded by security guards. His driveway’s gate was flanked by two black S.U.V.’s.
木曜日にはオンラインの弔意がネットに流れ、台湾、ニューヨーク、上海、フランクフルトのアップルストアの壁には手描きのカードが飾られた。SUV は姿を消し、自宅の歩道は弔意の花輪、キャンドル、リンゴの数々でいっぱいになった。リンゴはそれぞれ注意深く一口かじった跡があった。
On Thursday, as online eulogies multiplied and the walls of Apple stores in Taiwan, New York, Shanghai and Frankfurt were papered with hand-drawn cards, the S.U.V.’s were removed and the sidewalk at his home became a garland of bouquets, candles and a pile of apples, each with one bite carefully removed.
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子供たちに知ってほしい
Jobs 氏の伝記本(2週間後出版予定)の作者 Isaacson 氏は彼に尋ねた。あれほど人目につくのをいやがった彼がなぜひとりの作家の質問に答えてくれたのかと。「子供たちに自分のことを知ってもらいたいのだ。いつも一緒にいたわけではないから、自分がしたことやそのわけを子供たちに理解して欲しいのだ。」彼がそう答えたと Isaacson 氏はタイム誌エッセーに書いている。
Mr. Jobs’s biographer, Mr. Isaacson, whose book will be published in two weeks, asked him why so private a man had consented to the questions of someone writing a book. “I wanted my kids to know me,” Mr. Jobs replied, Mr. Isaacson wrote Thursday in an essay on Time.com. “I wasn’t always there for them, and I wanted them to know why and to understand what I did.”
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死こそ最高の発明品
Jobs 氏自身は大学を卒業していない。Reed College を半年で退学したが、2005 年にはスタンフォード大卒業式の来賓スピーチに招かれた。
Mr. Jobs himself never got a college degree. Despite leaving Reed College after six months, he was asked to give the 2005 commencement speech at Stanford.
そのスピーチで Jobs 氏は、(結局は彼の命を奪うこととなる)ガンだと告げられたとを語り、「死こそ生が生んだ唯一で最高の発明品だ。それこそ生に変化をもたらすもの(life’s change agent)だ」と聴衆に語った。
In that address, delivered after Mr. Jobs was told he had cancer but before it was clear that it would ultimately claim his life, Mr. Jobs told his audience that “death is very likely the single best invention of life. It is life’s change agent.”
死の恵みとは誰か他人が決めた人生を送ることで時間をムダに過ごしてはならないと分かることだ、と彼は語った。
The benefit of death, he said, is you know not to waste life living someone else’s choices.
「自らの内なる声が他人の意見という雑音にかき消されないようにしなさい。最も大切なことは、自分の心と直感の命ずるままに従う勇気を持つことだ。」
“Don’t let the noise of others’ opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition.”
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申し訳なさそうに
死に至る前の数か月、Jobs 氏はそのような思いをひと際強くしていた。「最後の数週間は、彼を頼りにしているひとびとへの気遣いでいっぱいだった。アップルで仕事をしているひとたち、4人の子供、それに妻だった」と Jobs 氏の妹 Mona Simpson はいう。「最後には優しく、申し訳けなさそうな感じだった。私たちを残して去るのがひどいことだと感じていたのだ。」
In his final months, Mr. Jobs became even more dedicated to such sentiments. “Steve’s concerns these last few weeks were for people who depended on him: the people who worked for him at Apple and his four children and his wife,” said Mona Simpson, Mr. Jobs’s sister. “His tone was tenderly apologetic at the end. He felt terrible that he would have to leave us.”
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生身の人間
「彼はとても人間的だった」と Ornish 医師はいう。「みんなが考えるよりずっと普通の、ひとりの生身の人間だった。だから彼はかくも偉大になれたのだ。」
“He was very human,” Dr. Ornish said. “He was so much more of a real person than most people know. That’s what made him so great.”
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メディアが描いてきた Jobs 像とは異なる姿だ。
それにしても多くの人々が Jobs の容態悪化をあらかじめ知っていたことに驚かされる。(パロアルト市警も事前に情報を得ていた。)
ひと月ほど前のツィッター騒ぎも無関係ではなかったのかもしれない。
[iPhone 4S イベントの空席:photo]
iPhone 4S イベントのときひとつだけ空いていた席が誰のためのものだったか、今にして思えば明らかだ。
最後の日々に Jobs の心に去来したものは何だったか・・・
家族のため、友人のため、会社のため、ひとつずつ片付けていく彼の胸の内を考えるとき胸がしめつけられる思いがする。
Jobs は最後まで Jobs らしく生きた・・・
★ →[原文を見る:Original Text]
[…] ジョブズ最後の日々(via maclalala2) [自宅前を飾る弔意の品々:photo] Steve Jobs の晩年について NY タイムズが書いている NYTimes.com: “With Time Running Short, Ste …[2] Apple […]
メディアイベントの当日、Cook達はSJが長くないことを知っていたということか。あるいはその時はすでに来ていて一日発表を遅らせたのかもしれない。そう思いながら、生中継を敢えてしなかったイベント動画の中のCook達の表情をじっと見てみる。
敬愛するSJからは生き方だけでなく、死に方を学ぶことにもなったーーー。
泣けた。
私は特に Philip Schiller が何だか悲しそうだな(あるいは表情が険しいな)、と思いながら見ていました。その後、 Jobs の訃報に接し、泣けてきました。
ジョブズについては、生き切るということを見せてもらった気持ちです。
私がアップルファンなことを知っている、でもご自身は興味を持っていない人から、「本当に最後、ぎりぎりまで生きたんだね」と言う言葉をもらいました。(6月のイベントのことを知っておられました)
ほんとうにほんとうに、すばらしく生きた人でした。
ジョナサン・アイブについての情報があまりないように思います。
二人はとても中がよかったと聞きます。落胆ぶりはひとしおではないかと思います。
今回の発表はデザインはほぼ変わらなかったので、きっと今はジョブズが残したいくつかの作品のデザインに取りかかっているのだと思いますが。
ジョブズらしい最期の日々だったようだ。
[…] ジョブズ最後の日々 « maclalala2 […]
[…] ジョブズ最後の日々 « maclalala2 […]
大手メディアがビル・ゲイツや孫正義にインタビューしていたのには、あまりの格の違いに白けた。ジョブズ氏は彼ら商売人(金以外は何も作り出していない)とは異なるということを理解していないことに呆れる。
この記事を読ませていただけたことに、感謝。
生きとし生けるものとして、これを読ませていただけたことに深く感謝します
シローさん、何時もありがとうございます。
ジョブズが亡くなったことを電車の中でしり、電車の中で泣きました。家に帰ってからも泣きました。そしてまたこの記事を読んで涙が出てきました。
生きるという意味を深々と考えさせられました。ありがとうございました。
ジョブズの伝記かってみよっかな
いつも興味深く拝読しております。
今回の記事は特に心にしみるものがありました。
良い記事を紹介して下さり、ありがとうございました。
ジョブス氏の話題はもう避けようと思いつつも…。
それが、ジョブス氏であろうとなかろうと、感慨が胸をつく記事。
実に読み応えありました。
ジョブズの伝記買ってみようと思います。
本当にすばらしい記事ですね。以下は私の勝手な意見です。今回のiPhone4S外見はあまり変更なしなのに内容はほとんど新機種といっても良いほどです。一連の状況を考えると,ひょっとして今回モデルは数ヶ月前からすでに病状悪化によりSteveが関与できなくなっていたんじゃないですかね。本来ならばやはりiOS5のスタートとともに外見のデザインを変えた5が検討されていたような気がします。世間では4SがSteveの遺作といわれていますが,私はiPhone4こそ彼の意思がすべて表現された遺作だと思っています。
https://maclalala2.wordpress.com/2011/10/08/ジョブズ最後の日々/#comment-form-load-service:Twitter
素晴らしい記事をありがとうございました。
20代にこの記事読めて幸せでした。
よかったです。
素晴らしい記事。
It is life’s change agent.