《Update:Dediu の分析を読み解く》
[アップルの業績を分析する:diagram]
株価下落の引き金となった決算発表だったが、昨年末のアップルの業績はそんなに悪かったのだろうか。
Horace Dediu の分析が興味深い。
asymco: “Margin Call” by Horace Dediu: 05 February 2013
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利益率の低下
アップルの利益率は、絶好調だった 2012 年第1四半期の 47% から、2012 年第4四半期にはそれまでになかった 38% にまで落ち込んだ。利益率が低下したことは売上価格の低下あるいは競争力の喪失をもたらす予兆となるのだろうか。
During the fourth quarter 2012 Apple’s margin fell to about 38%, a level not seen since two years earlier and down from a peak of 47% in Q1 2012. Does this lower margin foretell lower prices or a loss of competitiveness?
どう考えてもそうではない。
Obviously not.
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2011 年と 2012 年を比較する
冒頭の図は 2010 年、2011 年、2012 年の第4四半期の総売上高(Revenues)、売上原価(Cost of Sales)、営業経費(Operating expenses)、租税(Taxes)、純利益(Net Income)をそれぞれ3年分対比したものだ。特に興味を引かれるのは、2011 年と 2012 年の違いだ。2012 年の粗利益(Gross Margin) — 伸び率ではなく絶対額で矢印を付した部分 — が前年とほぼ同じであることに注目してほしい。租税と営業経費もほぼ同じなので、純利益も前年とほぼ同じだ。
The diagram shows Revenues, cost of Sales, Operating expenses, Taxes and Net Income relative to each other for the fourth quarters of 2010, 2011 and 2012. Of interest is the difference between 2011 and 2012. Note how the 2012 Gross Margin (absolute, not as a percent, identified with the arrow) did not change much from the year before. As Taxes and Operating Expenses did not change much either, the earnings were quite flat y/y.
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製造コストの増加
にも関わらず、総売上高は大幅に増加していることに注目して欲しい。粗利益(絶対額)はほぼ同じで、売上高が増えているので、利益率は減少する。これは売上原価が増加したためだ。売上高より売上原価の増加率が大きかったのだ。
However note also that total sales increased quite a bit. As the gross margin (absolute) remained steady and sales increased the margin as a percent fell. But the cause is that cost of sales also increased. They increased faster than sales increased.
2011 年第4四半期(期間調整済み)に比較すると、売上高は 27% 増、売上原価は 30.5% 増だ。2012 年後半には利益率が減少したが、これは製品の製造コストが増加したためだ。
Relative to adjusted 4th quarter 2011 Sales increased by 27% while Cost of Sales increased by 30.5%. Margins shrank in late 2012 because the products were more expensive to make.
単純な算術の問題なのだ。
It’s simple arithmetic.
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利益率低下=競争力低下ではない
売上高が増えれば売上原価も増えることはすぐ分かる。このため利益率も、売上高の一部として減少する。その原因はコストが増えたことにあり、価格が下がったからではない。
We can at a glance see that the cost of sales increased as a proportion of sales. Therefore the margin decreased as a percent of sales. The cause is higher costs, not lower pricing.
事実、前に分析したように価格はほぼ同じで変わっていない。(iPad が唯一の例外で下がっている。)もし価格に変化がなければ、競争力の問題は生じない。利益率の低下が競争力の低下につながるという根拠のない議論は簡単に論破できる。
In fact, pricing analysis was already performed and showed that they largely held steady (iPad being the only decline). If pricing is unchanged then competitive issues are not to blame. The supposed link between lower margins and some mythical loss of competitiveness can be easily disproved.
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学習曲線
明らかなことだ。なぜなら、誰でも知っているように、製造コストは製造量が増えるにつれ減少する。いわゆる学習曲線といわれるものだ。これはアップルが — どの企業であれ — 製品を出すたびに必ず起きたことだ。
Obviously. Because, as everyone knows, costs of production fall as output increases. It’s due to something called the learning curve. It’s something that has happened for all of Apple’s (or anyone else’s) product launches forever.
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利益率が低下したことから、アップル製品に対する需要が減り、したがってアップルは峠を越えたとウォール街が判断したため株価下落を招いた。
Horace Dediu の分析によれば、総売上げは大幅に増加しているのだから需要は減っていないことになる。むしろ、利益率低下の背景には製造コストの大きい製品へのシフトがあったという点が注目される。
2012 年は主力製品が一斉にリニューアルされた年だった。iPhone 5、iPad 4、iPad mini それに iMac などメジロ押しだった。
それまでとは異なる部品を使った製品が一斉に登場し、製造が需要に追いつかなかった。
製造コスト増という Dediu の視点は注目に値するのではないだろうか・・・
★ →[原文を見る:Original Text]
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《Update》Dediu の分析を読み解く(2月8日)
もともと数字に弱いので、経営分析とか株価の話になるとサッパリだ。
売上高、原価、営業費、公租公課、純利益なんてことばが並んだだけで脳細胞が拒否反応を起こしてしまう。
それでも数字が図になると、少しは分かったような気になる。今回の Dediu の分析がまさにそうだった。
一見複雑に見えるが、要は「売上 − 原価 = 利益」を図示しただけの話だ。
冒頭の図の左端が製品別に積み上げた売上高。その右が原価の合計だ。したがってその差額が粗利益[Gross Margin:売上総利益、粗利益]ということになる。
色をつけた部分が粗利益の内訳で、緑色が純利益だ。
これでクリスマス四半期の過去3年分を簡単に比較できることになる。
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2011 年のクリスマス期と比較するときは注意がいる。
このときアップルは空前の最高益を叩き出した。歴史的にみてもかつて石油価格高騰のさなかに ExxonMobil が叩き出した最高記録に次ぐものだ。これによってアップルは名実共に米国最大の企業となった。
叩き出した利益は巨額なものだったが、この四半期は他の年に比べ1週間だけ長いという特殊事情があった。
したがって 2011 年のクリスマス期と比べるときは、その点を考慮する必要がある。Dediu が期間調整済みとしているのはそういう意味だ。
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Dediu の結論は明々白々だ。
昨年のクリスマス期にアップルの売上高は大幅に増えた。(したがって需要は減っていない。)純利益も増えた。ただし、純利益の伸び率となるとプラスではあるがほぼ横ばいという感じ。
それでも空前の最高益を出した 2011 年よりアップルの業績がよかったことは間違いない。
これだけの業績を出しても期待はずれだとしたウォール街。一方期待はずれでも株価が値上がりしたアマゾン。・・・これはもう「飲まなきゃ、やってられないよ」(I need a drink.)と John Gruber が慨嘆するのも宜(むべ)なるかな、だ。
いかに株価が期待値のゲームだとしてもこれはなかなか理解しがたい。
今後も検証は続きそうだ・・・
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追記:部品発注の減少は事実だという点について
なお、サプライヤーへの部品発注が減ったという事実は確かにあったという報道も後を絶たないようだ。
減ったのが旧来モデルの部品なのか、それとも新しいモデルのものかによって話は大きく変わってきそうだ。
サプライチェーンは巨大化・複雑化している。
特定の部品メーカーの特定の部品発注が減ったことを理由に、その製品自体の需要が落ち込んだと結論づけるには、もっと詳しい証拠が要りそうだ。
さもなくば、「バリューチェーンの遥か下流の日本の匿名のソースが、世界市場の消費動向について知っているという主張をサポートするものは何もない」と Dediu に言われかねない・・・

売上が伸びている一方、新製品の大量投入により費用低減効果がまだ現れていないため利益率が低下したが、売上がさらに伸びて費用が低減するにつれて利益率は上昇するはず、ということですかね。ナルホド。
(…価格は「減る」「減少」ではなく、「下落」『低下』ではないでしょうか。)
> む さん
新製品投入によるコスト増に言及したのは Dediu が初めてではないかと思います
たしかに 値段は「下がる」ものですね そのように訂正しました
こんな分析しなくても、wall streetで、主要なアナリストの予想より低い売り上げでしたと言えば、それだけで株価に影響が出るはず。そこは計算ではなくて、人間心理。上がるとこまで上がったんだから、ここいらで調子悪くなるんじゃないかなあと思った人の気持ちが神の見えざる手。